Vladimir Putin, Dmitry Peskov

Kremlin spokesman Dmitry Peskov, bottom, looks on as Russian President Vladimir Putin speaks via video call during a news conference in Moscow, Russia, Thursday, Dec. 17, 2020. This year, Putin attended his annual news conference online due to the coronavirus pandemic. (AP Photo/Alexander Zemlianichenko)

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「北方領土の日」の2月7日、「プーチン氏と交渉やめよ 『ソ連崩壊30年』で新戦略を」との見出しで訴えた本紙「主張」に対し、ロシアのペスコフ大統領報道官が3月3日、モスクワの記者団との会見で「こうしたメディアは読まないでください」と批判した。さらに「日本を含むどの国にも過激主義者や極論の信奉者は大変多い」とも付け加えた。

 

日本のニュース・オピニオンサイト「ジャパンフォワード」が世界に発信した英文の本紙「主張」への言及である。「読むな」とは大統領報道官とも思えぬ粗暴な発言だ。クレムリンにとって、この「主張」が北方領土問題の歴史の真実を突いて目障りなのだろうが、早急に撤回を求めたい。

 

本紙は終戦直後、独裁者スターリンに不法占拠された北方四島の返還を一貫して主張してきた。ソ連が日本の国家主権を蹂躙(じゅうりん)した国家犯罪であり、「過激」や「極論」呼ばわりするのは共産政権時代からの宣伝戦の一環だ。

 

ロシアは昨年、憲法改正で唐突に「領土の割譲」と「割譲の呼び掛け」をも禁止し、違反者には改正刑法でそれぞれ最大禁錮10年、4年とする罰則を定めた。これを受けてプーチン大統領側近のメドベージェフ前首相は2月1日、「憲法改正でロシアには自国領の主権の引き渡しに関わる交渉を行う権利がない」と言い放った。

 

平和条約交渉の最中に、恣意(しい)的な憲法改正で一方的に領土交渉拒否に出たプーチン政権に対し、本紙「主張」は「無礼千万」だとして日本側から交渉打ち切りの決断をすべきときだと訴えた。

 

2月14日にはプーチン氏自身が記者団に「我々は日本との関係発展を望んでおり、今後もそうしたいが、ロシアの憲法に反することは一切しない」と断言した。この瞬間、歯舞・色丹の2島返還をうたった1956年の日ソ共同宣言に基づいて平和条約交渉を加速させる-との安倍晋三政権時代の日露合意(2018年11月)から「領土問題」は完全に消えた。

 

今月4日、BSフジに出演したガルージン駐日ロシア大使も「領土」に全く触れず、「平和条約は平和・友好・善隣条約といった形をとった方がいい」と語った。

 

重ねて訴える。日本政府は、「領土抜き平和条約」を策謀するプーチン政権との交渉を一刻も早くやめよ。

 

 

2021年3月10日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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