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韓国総選挙で尹錫悦大統領を支える保守系与党「国民の力」が大敗した。3年余の任期を残す尹氏が困難な政権運営を迫られるのは必至だ。
だが、尹氏には日米韓の協力を基軸とする安全保障政策を堅持してもらいたい。
尹政権はこれまで北朝鮮の脅威を直視し、自衛隊、米軍、韓国軍の共同訓練を進めてきた。日本との間では、文在寅前政権が運用を止めた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を正常化させた。
中国から圧力がかかるにもかかわらず、台湾情勢に関し「台湾海峡の平和と安定が重要だ」との認識も表明してきた。このような姿勢は評価できる。
今回の選挙戦では、安保政策の議論は深まらなかった。最大野党「共に民主党」は、「徴用工」問題などで政権や与党を「日本に譲歩した『親日』だ」と攻撃して、圧勝した。このようなレッテル貼りが通用するような韓国社会は、極めて残念である。
共に民主党の李在明代表は選挙期間中に「台湾海峡がどうなってもわれわれには何の関係もない」と発言した。中国の台湾侵攻と北朝鮮の韓国攻撃が同時に起こる可能性が指摘されているにもかかわらず、まるで人ごとだ。
2008年に大統領に就任した保守系の李明博氏は当初、未来志向の日韓関係を掲げていた。だが、実兄や側近の金銭スキャンダルが原因で支持率を落とし、政権末期の12年、島根県の竹島に不法上陸した。
在位中の上皇陛下に対し「歴史問題」で謝罪を要求するという極めて非礼な発言までした。これらの暴挙や暴言は、多くの日本国民に「負の記憶」として刻まれている。
外交・安保は大統領が主導するものである。親北傾向のある野党の圧力に屈しないでもらいたい。日韓、日米韓の安全保障の結束が弱まることは、専制主義国家である中露朝の独裁者を喜ばせるだけだ。
林芳正官房長官は4月11日、記者会見で、日韓の「関係改善を持続的に実感できるよう、引き続き韓国側と緊密に意思疎通する」と述べた。レーダー照射や「徴用工」などをめぐる日本側の懸念は解消されていない。これらに毅然(きぜん)とした態度を貫く必要がある。
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2024年4月14日付産経新聞【主張】を転載しています