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英国のグラスゴーで開かれていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が13日、閉幕した。
産業革命前に比べた気温上昇幅を従来の「2度未満」から「1・5度」に改める合意成立は会議の狙い通りだが、取り組みへの足並みの乱れが目立つ印象を拭えない。
中国は二酸化炭素など温室効果ガスの世界一の排出国でありながら、2030年まで排出を増やし続ける方針を改めることもなく、また排出の実質ゼロ年も60年に据え置いた。冒頭の首脳級会合に習近平国家主席は出席せず、国際協調に背を向けた対応だ。
1・5度目標の達成には、30年時点での排出量半減と50年までの実質ゼロ化が世界全体に求められているのを承知の上での対応である。インドとロシアの対応も遅い。米国を除く上位排出国がこのありさまでは、まじめな国々の努力が徒労に終わる。とりわけ主要経済国としての力量を持つ中国には誠意ある対応を求めたい。
重要課題であった石炭火力発電の扱いは「段階的な廃止」から「段階的な削減」に表現が和らげられた。批判もあるが穏当な措置と評価したい。途上国には安価な石炭火力の電気なしに生きていけない貧しい人々がいるからだ。
過去のCOPでまとまらなかった削減量の取引ルールが確立したことも大きな成果である。
日本は「2国間クレジット制度(JCM)」で途上国の排出削減に協力してきており、その削減量の一部が日本の削減分にカウントされるので、30年目標の排出量46%減に資することになる。
ルールの確立を受けて、途上国に対する脱炭素事業への支援も積極的に行える。日本が培ってきたクリーンな石炭火力発電技術の活用に道が開ける。
今COPの成果文書には、今後10年間での取り組みの加速を求める内容が加わった。会期終盤に原発建設の再開を発表したフランスのマクロン大統領の狙いは、脱炭素化と電力安定供給の両立を図ることにある。
隣国ドイツの脱原発に同調することなく国益と地球益の調和を目指す政治決断と評価したい。米国は次世代小型原発(SMR)の開発に意欲的だ。
日本も原発再稼働を軌道に乗せるべく、岸田文雄首相に指導力を発揮してもらいたい。
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2021年11月16日付産経新聞【主張】を転載しています
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