JAXA 001

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)が昨年から複数回のサイバー攻撃を受け、保有する情報が流出した。

 

大量の文書ファイルが不正に閲覧されており、関連企業や外部の研究機関、防衛省などの情報が漏洩(ろうえい)した恐れもある。中国系ハッカーの攻撃とみられている。

 

JAXAは7月1日、次世代主力ロケット「H3」3号機で国の先進レーダー衛星「だいち4号」の軌道投入に成功したが、ロケットや人工衛星の情報は安全保障にも深く関わる。

 

宇宙開発における海外とのプロジェクトは増えており、4月の日米首脳会談では、両国が宇宙開発で緊密に連携することを確認した。情報流出の影響は日本だけにとどまるまい。

 

ましてや、流出した情報が中国などの専制主義国家に流れれば、同盟国や友好国の安全保障を脅かす恐れがある。深刻な事態だと認識すべきである。

 

JAXA東京事務所が入るビル=東京都千代田区(共同)

 

JAXAは攻撃されたネットワークを遮断し、被害実態を調べている。林芳正官房長官は記者会見で「不正アクセスがあったネットワークではロケットや衛星の運用などの機微な情報は扱われていない」と説明したが安堵(あんど)はできない。サイバー攻撃を許した原因を突き止め、再発防止を徹底すべきは当然だ。

 

JAXAは平成28、29年にもサイバー攻撃の標的にされた。セキュリティーが甘く、攻撃が容易だとみられているとすれば問題だ。今回の被害も昨年秋に警察から通報を受けるまで把握できていなかった。

 

JAXAがセキュリティー上の信頼を十分に回復できず、米航空宇宙局(NASA)などとの今後の共同事業に支障を来すような事態になれば、国益を損なうだろう。政府側にも、攻撃を仕掛ける側に厳しく対峙(たいじ)していく姿勢が求められよう。

 

JAXAに限らず、省庁や政府系機関もサイバー攻撃の標的となり得る。電力や金融などの重要インフラがサイバー攻撃で機能不全に陥ることも防がなくてはならない。

 

そのための効果的な手立ての一つが、サイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」である。政府はこの導入に向けて、秋の臨時国会での法案提出を視野に入れた検討を進めている。国民の理解を促し、早期の法整備を図ることが重要である。

 

 

2024年7月3日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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