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国内屈指の米どころ新潟県南魚沼市。稲刈りが進む黄金色の水田のなかを上越新幹線が走りぬけていく。2階席の車窓から眺める秋の光景は格別だろう。
日本唯一の全2階建て新幹線「E4系」が10月1日、ラストランを迎え、24年間の定期運行を終える。国内から2階建て新幹線が姿を消すことになる。
新幹線に2階建てが登場したのは国鉄時代の昭和60年。東海道・山陽新幹線の「100系」が一部2階建てだったのが始まりだ。
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JR東日本によると、E4系は平成9年に東北新幹線で運行を始めた。現在は、東京と新潟を結ぶ上越新幹線で「Maxとき」や「Maxたにがわ」として1日19本が走っている。
16両編成時の定員は1634人で高速鉄道としては世界最大の輸送力を誇る。東京へ通勤通学する乗客の増加に対応し、冬季には群馬や新潟へ向かうスキー客の足としても活躍した。
2階建ては輸送人数の面でメリットがある一方、重量や空気抵抗が大きいため、さらなる高速化が難しく、JR東日本は最新型「E7系」への置き換えを決めた。
当初は昨年度末までに置き換えが完了する予定だったが、令和元年の台風19号で長野市にある新幹線の車両センターが浸水。複数のE7系が廃車になってしまったことでE4系の引退時期が伸びていた。
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鉄道ファンからは惜別の声もあがる。新潟県魚沼市の兼業農家、桜井博之さん(60)は「ひとつの時代の終わりで寂しい」と惜しみつつ、「初めて2階席に乗ったときは興奮した。またそんなワクワクする車両が誕生するといいね」と話した。
筆者:鴨川一也(産経新聞写真報道局)