~~
中国南部の海南省海口市(海南島)で5月7~10日、国内外の高級ブランド品などを集めた「第1回中国国際消費品博覧会」が開かれた。習近平国家主席の号令の下、海南島を自由貿易港として新たな経済拠点に成長させる計画が進行中で、同博覧会もその一環だ。香港で中国政府への反発が根強く残る中、「中国のハワイ」とも呼ばれる海南島を長期的に「第2の香港」に育てる思惑も指摘される。
日本をはじめ約70カ国・地域から宝飾品や化粧品など約2600のブランドが出展。会期中に外国人ら20万人超の来場を見込む。海南島への外資呼び込みを図るのが狙いとみられ、習氏は6日の式典に祝辞を寄せ、「各国が中国市場の機会を分かち合い、世界経済の回復にプラスとなる」と意義を強調した。
海南島をめぐっては2018年に中国政府が「自由貿易港」にする方針を決定。昨年6月、今世紀半ばまでに「国際的影響力を持つ高水準の自由貿易港」に育成するための計画を発表した。25年までに一部を除き関税をゼロにする優遇策を打ち出し、外資の進出規制緩和も急ピッチで進む。
特に目立つのが観光客らへの免税措置だ。昨年7月には1人当たりの免税購入限度額を年間3万元(約50万円)から10万元に引き上げた。新型コロナウイルス禍で海外旅行に行けない中国国内の富裕層が、海南島で“爆買い”に走っており免税店の開店も相次ぐ。
ちらつくのは地理的に遠くない香港の存在だ。海南島を香港に代わる消費・観光都市や金融・貿易センターに育てる狙いがあるのでは-と香港メディアは報じる。中国政府は「海南自由貿易港と香港の位置づけは異なる」と説明するが、今年4月にも海南島での金融サービスの対外開放方針を示すなど、香港を意識したような動きを見せる。
博覧会に参加した日系企業関係者は「海南島では外国語を使う人材が少ない」などと述べ、香港とは競争にならないと半信半疑だ。ただ、習氏が海南島重視の方針を示すことで、経済界を中心に香港への圧力になるとの見方もある。
活発化する日本ブランド
日本勢は資生堂やオムロンなど89のブランドが博覧会に参加した。新型コロナウイルス禍の影響で海外での“爆買い”が止まる中、海外の高級ブランド品などを集めた習近平国家主席肝煎りの同展示会で日本ブランドの存在感をアピールした。
資生堂は、年内に中国市場への投入を予定するスキンケアの高級ブランド「ザ・ギンザ」などを展示。ブースを訪れた地元の販売業者の男性は「日本製品に興味がある」と担当者に熱心に質問をしていた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日系企業19社が参加した展示館を設けた。和食器や化粧品のほか、昨年、海南島に初出店したコンビニエンスストア大手のローソンなどが商品を展示。ジェトロの担当者は「コロナ禍で日本に行くことができないこともあり、日本商品への関心は高まっている」と指摘する。
資生堂中国の長谷直子経営戦略本部長は「海南島が消費拡大の大きな推進力になっていくとみている」と強調。島内にある免税店の販売カウンターを3月末時点の34から、年末までに50以上に増やす計画という。
筆者:三塚聖平(産経新聞中国総局)