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探査機はやぶさ2が地球に持ち帰った小惑星リュウグウの砂粒の試料に含まれるガスの分析から、リュウグウは約500万年前に現在の地球に近い軌道に移動してきたことを宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが突き止めた。地球外の天体からガスの成分を気体の状態のまま採取したことを確認したのは世界初。10月21日付の米科学誌サイエンスなどに論文が掲載された。
採取した試料にはヘリウムやネオン、アルゴンなどの「希ガス」と呼ばれる気体が入っていた。性質がわずかに異なる同位体の比率を解析したところ、地球の大気と大きく異なっていたことから、リュウグウに含まれるガスだと結論づけた。
リュウグウは火星と木星の間にある小惑星帯で誕生した。ここでは天体同士が頻繁に衝突するため、天体の表面はかき乱されており、地表付近の宇宙線を浴びる量は、均一になりにくいと考えられている。
だが、はやぶさ2がリュウグウの地表で採取した試料と、人工クレーターを作って深さ約1・3メートルの地下から採取した試料に含まれるネオンはいずれも、深さ1~2メートルまで届く宇宙線を約500万年間浴び続けていた。このためリュウグウは約500万年前に小惑星帯を離れ、天体同士の衝突が少ない現在の火星と地球の間を周回する軌道に移ったと判断した。
研究チームの橘省吾・東京大教授は「リュウグウの形成過程がガス分析から分かってきた。太陽系形成の理解進展にもつながるのではないか」と話している。
筆者:伊藤壽一郎(産経新聞)