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皆さんはイワシという魚にどのようなイメージがありますか?。「弱い」「他の魚に食べられる」などのイメージが強いかと思います。かくいう私も、子供の頃はそういったイメージを持っていた一人です。
確かにイワシは被食者です。しかし、ただ食べられるだけの弱い魚ではありません。それに、他の魚の餌になることで海の生態系を支えている縁の下の力持ちでもあります。
イワシは群れを作ってその身を守りますが、大きな群れになることで、いち早く外敵を見つけることができます。また、数万匹もの群れでバッと逃げられると、他の魚も狙いを定めにくいといった効果があるとも言われています。
こうした工夫で厳しい自然界を生き抜き、豊かな海の命を支えている魚がイワシなのです。
イワシの仲間である「マイワシ」ですが、茨城県では江戸時代からイワシ漁が盛んに行われており、日本一の漁獲量を誇ります。当館では、そうした地元で有名なイワシを、館内最大の水槽である「出会いの海の大水槽」で展示しています。
以前は群れとしての展示でしたが、それだけではこの魚の魅力が伝わらない。もっと注目してほしい、という思いから、開館20周年記念事業としてイワシが主役の新しいプログラムをスタートさせました。
光と音を駆使し、イワシたちの〝生命の躍動感〟を表現しながら、食物連鎖の世界を日々生き抜くリアルな情景に、思いをはせてもらいたく「IWASHI LIFE」と命名しました。
しかし、プログラム完成までの道のりは決して順調ではありませんでした。当時、照明はオンとオフしか機能せず、思ったような光の色が出ない。見てほしい群れの動きには光が届かない。光が水槽の下に届いたと思えば、イワシたちは光の後ろ側で群れを作ってしまいます。
何度も何度も調整を重ね、ようやく一昨年6月、無事にスタートすることができました。そして今春、「もっとイワシの魅力を伝え、お客さまに喜んでもらいたい」という願いを胸に、「IWASHI LIFE」のリニューアルを行うことが決定しました。
照明の変更や音響設備の追加、群れとしての躍動感をさらに表現するため約1万5千匹のイワシを約2万匹へ増やし、今年5月に新しい「IWASHI LIFE」として第2の物語が始まりました。
「出会いの海の大水槽」で暮らす多種多様な生き物たちとともに繰り広げられる幻想的な世界観。餌を落とす場所や深さ、タイミングを調整することで、イワシたちが水槽全体を大きく群れ動く姿を可能にしました。一度たりとも同じ動きを見せないイワシの群れの様子は、さながら〝海中の万華鏡〟のように変化していきます。新しくなった「IWASHI LIFE」を、ぜひお楽しみください。
筆者:久崎智也(アクアワールド茨城県大洗水族館魚類展示課)
■アクアワールド茨城県大洗水族館 茨城県大洗町磯浜町8252の3▽営業時間=午前9時~午後5時▽入場料金=大人2300円、小・中学生1100円、3歳以上の幼児400円▽029-267-5151
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2023年8月3日産経ニュース【よかっぺ飼育日記】を転載しています