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12年に一度、インド北中部のプラヤグラージで2か月間にわたる「クンブ・メーラー」が開催される。この祭典には数億人の巡礼者が訪れ、ガンジス川、ヤムナー川、そして干上がったサラスワティ川という三つの聖なる川の合流点で沐浴する。
インドでは川は常に神聖視され、とりわけ合流点は特別な聖地とされている。ヒンドゥー教徒は、神聖な機会に川で沐浴するとすべての罪が洗い流され、死後魂が解放されると信じている。
プラヤグラージのクンブ・メーラーもそのような聖なる機会の一つである。通常は12年に一度、木星が牡牛座、太陽が山羊座にあるときに行われる。しかし、2025年の祭典は特別で、太陽、月、木星、土星が144年に一度しか訪れない配置となる。このため、「マハー・クンブ(偉大なクンブ)」と呼ばれ、1月13日から2月26日までに4億人が参加すると予測されている。
クンブ・メーラーの歴史と天文学的象徴
古代ヒンドゥー教の文献には、ヒンドゥー暦のマーガ月(太陽が水瓶座にある月)に聖なる川で行われる沐浴祭「マーガ・メーラー」の記述がある。水瓶座はサンスクリットで「クンブ」(水瓶)と呼ばれるため、この祭は「クンブ・メーラー」とも呼ばれる。
マーガ・メーラーは「甘露の瓶」にまつわる伝説と関係している。伝説にはいくつかのバリエーションがあるが、南インドの伝説によれば、地球が大洪水に飲み込まれようとした時、シヴァ神は水瓶に生命の種と甘露を入れ、水面に浮かべたと言われている。
洪水が引いた後、水瓶は丘の上に留まり、その場所は後に「クンバコーナム」(水瓶の山)と呼ばれるようになった。シヴァ神は猟師の姿を取り、水瓶に向けて矢を放ち、その中身を地上にこぼした。こうして地球上に再び生命が誕生した。
天文学を知っている人なら、水瓶は水瓶座、猟師はオリオン座を指していることに気づくだろう。実際、夜空を見上げると、オリオンの矢が常に水瓶座を指しているのがわかる。
タミル・ナードゥ州のクンバコーナムでは、シヴァ神の寺院に囲まれた池が有名で、この池は水瓶の甘露がこぼれてできたとされる。マーガ月に太陽が水瓶座に入るタイミングで巡礼者が訪れ、この池に浸かる。太陽は地球上の生命に欠かせない存在であることを思うと、その象徴性は美しい。
さらに12年に一度、木星が獅子座を通過すると池の水が若返ると言われる。木星は知恵、獅子座は力を象徴し、木星が獅子座を通過する時、強力な精神的エネルギーが発生すると考えられており、この特別な年の祭典は「マハー・マーガム(偉大なマーガ祭)」と呼ばれる。前回のマハー・マーガムは2016年2月22日に祝われた。
宗教討論の場としてのクンブ・メーラー
クンバコーナム・マーガ祭は、インド全土で行われる数多くのマーガ祭の一つにすぎない。太古の昔から、神聖な川や合流点のある場所では、巡礼者たちがマーガの月に魂の解放を求めて集まってきた。
そして、8世紀にヒンドゥー教哲学者アーディ・シャンカラは、ハリドワール、プラヤグラージ、ウッジャイン、ナーシックに様々な宗教宗派の賢者や学者を集め、宗教討論を行う場として「クンブ・メーラー」を導入した。
以後、これらの場所では、天体の様々な配置に基づいて数年に一度クンブ・メーラーが定期的に開催され、多くの賢者や宗教学者が集まるようになった。
突如現れる巨大都市
2017年、クンブ・メーラーは世界最大の巡礼者の平和的集まりとして、ユネスコの無形文化遺産に登録された。
プラヤグラージでは、ガンジス川の川幅が非常に広いものの、冬になると水位が大幅に下がり、川床の広い範囲が干上がる。昔から巡礼者たちは川床にテントなどを張り、祭りの期間中そこで滞在してきた。
しかし近年、巡礼者数の増加に対応するため、政府は祭りの運営を引き受け、安全で快適な環境を整備している。電力網、水道管、衛生システム、食料や水の配給システム、病院、救急所、警察署や消防署、ATM、遺失物センターなど、さまざまな施設を備えた巨大なテントシティが川床に設置される。何億人もの巡礼者のためのこの壮大なキャンプ地とその円滑な運営について学ぶため、2013年にはハーバード大学の教授や学生たちがプラヤグラージを訪れ、ケーススタディを実施したと報告されている。
2025年には、16万張のテント、15万個のトイレ、1,250kmの水道管、3,500本以上の特別列車など、前例のない規模で準備が進められている。
ハイテク技術による安全管理
クンブ・メーラー規模の集会は群衆暴動やテロ行為等も懸念事項であるが、2025年のマハー・クンブでは、統合指揮統制センターが設立され、AIカメラやドローンによる24時間監視が行われる。
また、潜在的な脅威を検知し、実用出来る情報を迅速に生成するために、警察、準軍事組織、諜報機関で構成される高度な7層のセキュリティサークルも構築されている。
日本の技術で育てられた宮脇森林
1970年代、日本の植物学者・宮脇昭は、さまざまな種類の木や低木を密接に植える方法を開発した。この方法では、自然の森林を模倣し、植物の成長速度を10倍に高めるとともに、より多くの炭素を吸収することができる。
宮脇森林は、汚染された都市部や荒れ地の生態系バランスを回復するのに非常に効果的であるとされている。
2025年のマハー・クンブに向けて、わずか2年でプラヤグラージの各地に14エーカーの宮脇森林が作られた。これらの森林は、マハー・クンブの際に「酸素バンク」として機能し、市内の空気質を改善する役割を果たす。
結論
インドの宗教文化は、同国を理解するうえで欠かせない要素である。特にクンブ・メーラーはその中心的存在であり、インドの宗教心の深さを象徴している。
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Author: Usha Jayaraman
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