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2023年2月26日付産経新聞【世界を解く―細谷雄一氏】より
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ロシアによる昨年2月24日のウクライナ侵攻から1年が経過した。どちらが勝利するか見通せないが、1年を振り返ると、戦争の勝者はそのどちらでも、米国でもなく、中国になる可能性が高い。米国は狡猾(こうかつ)な中国外交に翻弄されている。
開戦のとき、中国は敗者だった。習近平国家主席は侵攻20日前にプーチン露大統領と会談し、中露の「友情に限界はない」と表明した。台湾の独立阻止を念頭に、ロシアによるウクライナの一部併合には明確に賛同しないが、対露批判を控え、国際社会で侵略の加担者とみなされた。
だが、習指導部は軌道修正してきた。ロシアとの距離も目立つようになった。その一つの表出が、昨年11月の中独首脳会談で核兵器の使用と威嚇に反対する共同声明を出したことだ。プーチン氏は国家の存在が関わる場合の核兵器使用を示唆していたが、これと明確に異なる立場を示した。
聞き手:宮下日出男(産経新聞)
■ほそや・ゆういち 国際政治学者。慶応大教授。安倍晋三政権で「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員、国家安全保障局顧問などを歴任した。慶応大大学院修了。博士(法学)。1971年生まれ。