~~
東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、計画の安全性を検証してきた国際原子力機関(IAEA)は7月4日、放出計画は「国際的な安全基準に合致する」との包括報告書を公表した。ただ、中国や韓国など周辺諸国からは反発も予想される。日本政府は科学的な根拠を基に、粘り強く理解を求めていく構えだ。
福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、諸外国から安全性への理解を得ようと、政府が情報発信を強化している。近隣の中国や韓国が非科学的な批判を繰り返し、政治利用しているためだ。だが、中韓には、放射性物質トリチウムの年間排出量が福島第1の6倍を超える原発もある。政府はこうした客観的な事実も対外的に示しながら、諸外国に冷静な対応を求めている。
福島第1のトリチウムの年間排出量は事故前の管理目標と同じ22兆ベクレル未満を予定する。濃度を国の規制基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1に希釈した上で流す計画だ。放出後には海水と混じり、さらに薄まっていく。
トリチウムの除去は技術的に難しく、海外でも基準値以下に薄めてから海洋や大気中に放出している。中には、福島第1の排出量を大きく超過する事例も少なくない。
経済産業省によると、中国では秦山第3原発が約143兆ベクレルと福島第1が予定する6・5倍、陽江原発は5倍、紅沿河原発は4倍。韓国でも月城原発が3・2倍、古里原発が2・2倍に上る。
欧米では、数字がさらに跳ね上がる。フランスのラ・アーグ再処理施設は454・5倍。カナダのブルースA、B原発は54倍、英国のヘイシャム2原発は14・7倍とけた違いだ。
これらのデータは経産省が海外向けに開設したサイトにも盛り込まれている。政府は諸外国から求めがあれば説明の機会も設けてきており、今年5月には韓国政府が派遣した専門家が福島第1を視察した。
西村康稔経産相は4日、IAEAのグロッシ事務局長に対し、「海洋放出の安全性について、国際社会に対してもしっかりと透明性をもって情報発信していきたい」と伝えた。
筆者:米沢文(産経新聞)