「公正なロシア」のミロノフ党首=2021年9月(タス=共同)
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「ロシアは北海道の権利を有している」。テレビ朝日は7日、ロシアの政党「公正なロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首が、党のホームページでこう表明したと報じた。ミロノフ氏は10年近く上院議長を務めた大物だという。やはりそう来たかと感じる。
ロシアの前身であるソ連は1945(昭和20)年8月16日、スターリン国防委員会議長名で米国のトルーマン大統領にこう要求した。「ソビエト軍に対する日本降伏地域に、北海道島の北半を含めること」。トルーマンが拒否したからよかったものの、応じていたら北海道の半分はロシア領となっていた。
「日本の政治家たちが、第二次世界大戦の教訓と関東軍の運命を完全に忘れていないことを願っている」。ミロノフ氏は別の場でこうも述べている。彼が言及した「大戦の教訓」「関東軍の運命」とは何か。ロシアに逆らうと痛い目に遭うぞとでも言いたいのか。
45年8月9日、日ソ中立条約を破って満州に侵入したソ連軍は金品略奪、婦女暴行、捕虜の数合わせのための青年狩りなど暴虐の限りを尽くす。さらに日本の降伏後に60万人を超える日本人を拉致し、強制労働を課した。教訓というなら、彼らに降伏しても平和も安全も保証されないということだろう。
20年以上前、ロシア極東のカムチャツカ州を訪れた。通訳のロシア人青年は「(日本の北方領土の)南千島4島は、日露戦争で日本に奪われた」と嘘の歴史を習ったと語った。千島全島が70年間も日本領だったことは、「信州大に留学するまで知らなかった」。
現在のロシアによるウクライナ侵略は、双方から虚偽情報が飛ぶ情報戦となっている。一方の情報だけうのみにはできないが、少なくともロシアは信用できない。
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2022年4月9日付産経新聞【産経抄】を転載しています