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大分県別府市で湧出する温泉水に生息している微生物に、新型コロナウイルス感染リスクを53%以上低減させる可能性があることが、同市に本社を置くバイオテクノロジー企業、サラビオ温泉微生物研究所の調べで分かった。温泉への入浴やサウナなどに加え、この微生物の成分を含ませた加湿器やうがい、経口摂取でも効果が期待できるという。同社は地元自治体とも協力するなどして、臨床試験や実証研究を進め、温泉水による新型コロナ防疫への効用を訴求していく。
同社は平成23年、自社敷地内に保有する温泉から藻類の一種である微生物の単離培養に成功した。これを「RG92」と名付け、27年に特許取得している。
不規則な生活習慣やストレスが続くと、細菌バランスが崩れるなどして腸内環境が乱れ、人体内の免疫力が低下して粘膜細胞に炎症反応が起きやすくなる。この炎症反応が、細胞膜の上に存在している「ウイルス侵入誘導因子」を増やし、そこにウイルスが入って来ると感染のリスクが高まると考えられている。
同社の「RG92」から得られたエキスは、ウイルス侵入誘導因子の増加を有意に53・4%低減し、炎症反応を抑える効果がある、との研究結果が得られた。
同社中央研究所の宮田光義所長は、「腸内でウイルス侵入誘導因子の増加をRG92が抑制することが臨床試験でも実証されれば、新型コロナへの感染リスクを相当度、低下させる可能性がある」と話している。
同社は、広島大や順天堂大、久留米大、立命館アジア太平洋大などと共同研究を進めてきた。すでに「RG92」が炎症や酸化を改善する作用や、アンチエイジング(老化防止)作用があることを確認している。
打撲や関節炎、アトピー性皮膚炎、メタボリックシンドロームなどへの改善効果も期待できるとして、国際学会での発表や、学術誌へ論文の掲載も行った。
同社は温泉微生物の研究を今後も進め、「大分県や別府市、関係機関や観光業界とも協力し、新型コロナへの防疫効果を改めて確認の上、別府温泉への観光客の誘致に結び付けていきたい」(濱田茂会長)としている。さらに「RG92」の成分を含有する商品群の販路を国内外に広げ、健康効果を訴えていく方針だ。
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ウイルス侵入誘導因子(TMPRSS2) ヒトの細胞膜の上に存在するタンパク質分解酵素の1種。コロナウイルスとヒトの細胞の間の膜融合に関わり、細胞内へのウイルス侵入を促してしまう。
筆者:河崎真澄(産経新聞)