~~
台湾の交通部観光署(観光庁に相当)は2月8日までに、3月からの解禁を打ち出していた中国行き団体旅行の販売を停止すると発表した。中国当局が1月末、台湾海峡上空に設定された民間機の航路の運用変更を一方的に発表したことなどへの対抗措置の一環とみられる。中国は反発しており、中台関係がさらに悪化する可能性がある。
台湾紙の自由時報によると、観光署は7日、各旅行業者に対し、3月1日から認めていた中国行き団体旅行の販売を停止するよう通達した。すでに販売済みの5月末までのツアーについては渡航を認める。
台湾の交通部(国土交通省)は昨年11月、今年3月から中国行き団体旅行を解禁する方針を公表。各旅行業者は中国の東北地方やチベット自治区、江蘇省蘇州などへのツアー販売を始めていた。民主進歩党の蔡英文政権は、コロナ禍などで中断した中台間の団体旅行を通じた交流を再開させることで、中国が台湾に歩み寄り、関係改善につながることを期待していた。
だが中国は今のところ、台湾への中国人団体旅行の再開に向けた動きを全く見せていない。さらに中国当局は1月30日、台湾海峡の中間線付近に設定している航路「M503」について、より台湾寄りに飛行するよう運用を2月1日から変更すると発表。台湾側は一方的な現状変更だとして中国に猛抗議したが、無視された。
中国行き団体旅行の販売停止について、5月に台湾の総統に就任する民進党の頼清徳副総統は「中国と対等の立場で交渉したいという私たちの立場に変わりはない。早く正常な状態に戻ることを期待する」とのコメントを発表した。一方、中国で対台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は7日、「両岸同胞の交流を阻害し、その幸せを損なう行為だ」と批判した。
筆者:矢板明夫(産経新聞)