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「異次元の少子化対策に挑戦する。出生率を反転させなければならない」。岸田文雄首相は1月4日の記者会見で強調した。確かに今のままでは、米電気自動車大手テスラの最高経営責任者、イーロン・マスク氏が昨年5月にツイートした「日本はいずれ存在しなくなるだろう」との予言は、現実のものとなりかねない。
昨年1年間の出生数は、過去最少だった令和3年の81万1622人どころか、77万人にまで急減するとも予想される。まさに日本消滅の危機であり、首相が(1)経済支援(2)子育て家庭向けサービスの拡充(3)働き方改革の推進-の3点について、具体策検討の旗を振るのは理解できる。
ただ、少子化の背景にあるのは、政府が指摘するような「若者の経済的不安定や長時間労働など結婚・出産・子育ての希望の実現を阻む要因」(加藤勝信厚生労働相)ばかりではあるまい。何しろ平成に入る前は、生活が苦しくても多忙でも9割以上の成人が結婚していたのだから。
それが現代では男性の4人に1人、女性の6人に1人が未婚のまま一生を終える。なぜなのか。山口恵以子さんの小説『婚活食堂』で、はっとさせられた言葉がある。「日本人は恋愛結婚に向いていない」「日本人は恋愛ベタなのよ」。
かつては年頃になると、本人が特に何もしなくても職場の上司や親類、近所の世話焼き仲人ら年長者が出会いの仲立ちをするシステムがあった。ところが、見合い結婚は5%かそこらにとどまる恋愛結婚至上主義の世の中になった結果、自ら結婚相手を獲得できる恋愛強者以外ははじかれてしまった。
既婚者への支援も有効ではあろうが、望んでいても結婚できずにいる層への異次元の対策も、国として検討してはどうかと愚考する。
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2023年1月14日付産経新聞【産経抄】を転載しています