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防衛省が、現在のミサイル防衛(MD)で対処が難しいとされる極超音速兵器などを探知・追尾するため、日本海などの上空に多数の滞空型無人機を常時展開する構想を検討していることが30日、分かった。同省は令和4年度当初予算に調査研究費1億円を計上。人工衛星を低軌道に多数投入する米国の「衛星コンステレーション」と並行し、新型ミサイルの探知・追尾態勢構築を目指す。
検討中の構想では、長時間飛行が可能な固定翼の滞空型無人機で数機から数十機のチームを日本海や東シナ海など地域ごとに編成。無人機は地上システムによる管制で継続的に飛行し、搭載された小型赤外線センサーで監視した低空域のデータを地上へ伝送する。燃料補給で交代しながらチームで常時監視態勢を取り、既存のMDによる迎撃も視野に入れる。
中国やロシアなどが開発で先行する極超音速滑空兵器(HGV)などは通常の弾道ミサイルより低い高度を音速の5倍となるマッハ5以上で飛ぶため、対空レーダーをかいくぐり、従来のMDでは探知が遅れて追尾が難しいとされる。
こうした新型ミサイル対策として米国が進める「衛星コンステレーション」は、早期警戒衛星が投入されている高度3万6千キロの静止軌道に対し、300~1千キロの低軌道に1千基以上の小型赤外線観測衛星を投入。より低高度から監視することで新型ミサイルの探知を可能にする。
周辺地域でのデータ共有を図るべく防衛省も参画を目指しており、今年度予算に研究費約3億円を計上している。米国は2年後をめどに試験運用する計画だが、多数の衛星を高速通信網でつなぎ、高度な演算処理を実現できるかどうかは不透明だ。
そこで同省は衛星コンステレーションとは別に、今年度から無人機を活用した態勢構築へ向けた検討を開始。既に米国メーカーなどの複数機種が検討対象になっている。
防衛省は平成28年、無人機に関する中長期ビジョンを策定したが、技術基盤の確立が課題だった。同省はまず常時監視態勢が可能かどうかを見極める方針だ。