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作家の村上春樹さん(72)が母校の早稲田大に寄贈・寄託した書籍やレコードなどの資料を収蔵する国際文学館(村上春樹ライブラリー)が10月1日に開館するのを前に報道関係者に公開され、村上さんらが22日、同大で記者会見した。村上さんは「新しい文化の発信基地になってくれたらいい。都会の真ん中という地の利を生かして、大学と外の世界が混じりあえるような場所になれば」と期待を寄せた。
早稲田キャンパス内の演劇博物館に隣接する校舎を改築した地上5階・地下1階建ての施設(総面積2147平方メートル)では、外国語版を含めたすべての村上作品や関連書など約3千冊が閲覧できる(当面は新型コロナウイルス対策で入館を制限)。村上さんが早大在学中に夫婦で開業したジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使っていたピアノや椅子、レコードも並び、現在の書斎を再現した部屋も。イベントに使う交流スペースや学生が主体となって運営するカフェ「橙子猫(オレンジキャット)」も備える。村上さんは「物語を拓こう、心を語ろう」という同館のコンセプトに触れ、「コロナ禍で多くの若い人が未来に対して薄暗いビジョンしか抱けていない気さえする。でもどんな形でも理想はあるべきで、良質な物語のサンプルを示していくのが小説家の役割」とも語った。
施設の設計は建築家の隈(くま)研吾さんが担当。費用は早大の卒業生で衣料品店ユニクロを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんが全額寄付した。会見に同席した隈さんは「(村上文学の特徴でもある)現実と非現実のはざまのような世界を建築で表したかった」。柳井さんは「日本と欧米、アジアの人たちが一緒になって新しい文学、文化を作り発信する場所になってほしい」と語った。
入館料は無料で、事前予約が必要。予約などの詳細は国際文学館のサイトで。