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3月29日、気象庁は東京の桜(ソメイヨシノ)の開花を発表した。これは、平年より5日遅く、昨年より15日遅い観測だ。桜の開花は暖冬で例年早いと予想されていたが、3月になって寒さが戻ったため平年や昨年より開花が遅れたようだ。東京の桜開花は昨年は観測史上最早だったが、今年は、2012年の3月31日に開花した以来、12年ぶりの遅さに戻った。
桜は、早春に咲く種類、ソメイヨシノのように盛春に咲くもの、その後の晩春に咲く八重の種類もあるので、遅咲きの今年は4月末まで東京の桜はまだまだ楽しめそうだ。
60種類以上の桜がある新宿御苑
東京・新宿御苑には60種類以上の桜が植樹されていて、10月から4月末まで各種桜が楽しめる。「えっ10月だって?」それは、10月から3月くらいにかけて咲く、「秋咲き」の桜が数種類あるからだ。2月になると寒桜類が開花して桜前線がスタートする。4月上旬くらいまでの盛春の時期に咲く桜は花びらが一重の桜が多く、4月中旬からは花びらが八重の種類が中心になる。
新宿御苑は桜の季節の4月24日までは無休で、6月30日までは入園できる時間が17時半までとなる。園内にはアルコール飲料は持ち込めない。ソメイヨシノの後に楽しめる代表的な種類は、イチヨウ(一葉)、カンザン(関山)、フゲンゾウ(普賢象)、フクロクジュ(福禄寿)など。
訪日客への経済効果期待
園内で次々に咲く豊富な桜を目当てに、多くの外国人も同苑を訪れる。中国の歴史的衣装でコスプレした集団に出会った。昨年の桜開花日を勘案して、数ヶ月前に今年の集合日を3月16日に決めたものの、まだ咲いている桜は寒桜類だけだった。それでも皆、思い思いのコスプレ衣装で楽しんでいた。
ベトナムから来日した一行は民族衣装をまとい、早春の桜を満喫していた。和菓子や弁当を苑内に持ち込んで賑わう外国人も多い。また、女性グループがぬいぐるみを並べて、桜をバックに撮影していた。本人たちは「顔出しNG」とのことで残念ながら紹介できないが、皆、人それぞれの「お花見」を楽しんでいる。
日本政府観光局(JNTO)によると、2023年の年間訪日外客数は2506万6100人で、コロナ禍前の2019年比で78.6%にまで回復している。さらに、旅行大手のJTBは2024年の訪日外国人数見通しが3310万人と予想。対前年比で31.3%増、対2019年比で3.8%増の数値だ。ある経済学者は、今年、桜の季節に合わせて訪日する外国人客は350万人以上と推測し、花見客の交通費、宿泊代、飲食費や土産代などの支出と、旅行業や生産者、小売業への収入を合わせた経済効果は約1兆1358億円に上ると試算している。その数値は昨年の約1.8倍になる。円安も相まって、日本の桜は思わぬ経済効果をもたらすか。
麻布台ヒルズの桜
2023年秋に開業した東京の新スポット、麻布台ヒルズでも桜が楽しめる。種類は限られているが、2月にカワヅザクラ(河津桜)、3月下旬からソメイヨシノ(染井吉野)、オオシマザクラ(大島桜)、これからカンザン(関山)が楽しめる。
桜の開花の法則は間違っている?
筆者は昨年、「桜開花の600度の法則」について触れたが、今年はこの法則が見事に外れた。桜愛好家の間では「目安」として参考になる法則だったが、今年は1月からの積算温度が700度程度になっても開花しなかった。気象予報士などは、「冬の間に一定の寒さがないと桜に開花のスイッチが入らない。暖冬続きだと開花が遅れるのでは」と分析している。地球温暖化は桜の開花時期をも狂わせるのか。
筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)