中国の習近平国家主席
=2021年10月(AP)
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亡くなった英国のエリザベス女王は礼儀正しく、マナーを重視した。「あの人たちは駐中国英大使にとても失礼だった」。女王は2016年5月、前年に英国を公式訪問した習近平国家主席ら中国代表団の振る舞いについて、こう漏らして話題を呼んだ。その場面が英BBC放送などで放映された。
習氏といえば平成21年12月、副主席としての来日時の態度もいただけなかった。当時の鳩山由紀夫内閣は、天皇陛下との会見を望む場合は1カ月前までに文書で申請が必要という「1カ月ルール」を破り、習氏と陛下との会見をセットした。そうまでしたのに、習氏は陛下におじぎもせずに握手で済ませたと評判が悪かった。
そんな中国は今回、安倍晋三元首相の国葬に関してもくちばしを入れてきた。台湾が国葬への代表派遣に前向きな姿勢を示しているのに対し、中国外務省の毛寧報道官は記者会見で牽制(けんせい)した。「台湾独立勢力が政治工作する舞台を日本は提供してはいけない」。
安倍氏の国葬はわが国の儀式であり、米国のハリス副大統領やインドのモディ首相、カナダのトルドー首相ら各国首脳が参列する。オーストラリアに至っては現職のアルバニージー首相のほか3人の元首相まで駆けつけ、故人をしのび別れを告げる。中国の口出しは無粋かつ非礼である。
女王も安倍氏の訃報が届いた際には、追悼の声明を発している。「安倍氏の日本への愛と、英国との絆をより緊密に築きたいとの思いは明らかでした」。厳粛であるべき儀式を内向きな政争の具にしたり、反論できない故人をおとしめ続けたりするのは礼を失している。
日本人は礼儀正しいといわれてきた。国葬反対派のデモや集会の騒乱で、その高評価が一変しなければよいが。
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9月10日付産経新聞【産経抄】を転載しています