~~
菅義偉首相は16日午後(日本時間17日未明)に米ワシントンのホワイトハウスで行われた日米首脳会談に「勝負服」で臨んだ。青いネクタイに「ブルーリボン」バッジ。いずれも官房長官時代の平成31年4月に新元号「令和」を発表した際の服装だ。青は拉致被害者救出運動の象徴の色で、首相は後に「拉致の思いを発信したかった」と語っている。
会談ではバイデン米大統領と拉致問題を即時解決する必要性を共有した。サリバン大統領補佐官やキャンベル国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官ら同席した米政府高官もブルーリボンを身に着けていたのは、拉致問題解決への首相の熱意が伝わっている証しともいえる。
ただ、日米首脳会談で首相が特別にアピールしたのはこの程度で、事前に「平常心だ」と側近に語ったように、いつも通りの姿勢で臨んだ。
首脳会談やハリス副大統領との会談の一部を報道陣に公開した際は、ほとんど笑顔を見せることなく、大ぶりなジェスチャーで語り掛けられてもジッと相手を見据えるだけだった。普段はパフォーマンスを好まないのに、外国要人との会談となると極端にフレンドリーになる政治家とは一線を画した。
会食時に食事に手を付けず、話に熱中するのも普段通りだった。
通訳だけを交えたバイデン氏との1対1の会談ではハンバーガーを振る舞われたが、ほとんど口にすることはなかった。家族の話や東日本大震災後にバイデン氏が仙台市を慰問した話に夢中になり、首相は周囲に「時間が足りなかった」と語った。
首相にはバイデン氏と個人的な信頼関係を築く自信があったようだ。
2人はともに有力政治家を親族に持たない。首相は同行記者団に「私と似ているような感じを受けていたが、バイデン氏本人もそう思っているようだ。たたき上げの政治家で共通点がいっぱいある」と語った。バイデン氏も共同記者会見の冒頭、「実際に会って話し合うことに勝るものはない」と述べた。
2人は「ヨッシー」「ジョー」と親しそうに呼び合い、会見終了後に大統領執務室へ戻る際には互いに肩をたたき合った。親密な2人のしぐさを見て、首相同行筋は「あんなことは事前に誰もアドバイスしていない。自然に出たのだろう」と喜んだ。
筆者:杉本康士、黒瀬悦成(産経新聞)