インドを訪問中の加藤勝信・厚生労働相は19日、ガンディーナガルで開かれた20カ国・地域(G20)保健相会合後、産経新聞のインタビューに応じ、インドの製薬関係者と原薬の輸入など製薬分野について議論を深めたいと述べ、安全保障の観点から薬の日印協力を検討していることを明らかにした。
日本は、製薬に欠かせない原材料を中国に大きく依存している。「薬の安保」をめぐる議論は今後、深まるとみられる。
安定供給に課題
加藤厚労相はその中で、「日本には薬の安定供給という課題があり、インドから薬の原材料を含めてかなり輸入している。今回はハイデラバードにあるインドの製薬会社の工場を見学し、会社の幹部の方々と議論を深めてきたい」と語った。
コロナ禍では、中国から抗生剤などの原薬の供給が滞り、一部の薬の生産が一時中断した。このため製薬関係者の間では、薬の安定供給が喫緊の課題となっていた。感染症危機や台湾有事など国際情勢の緊迫化で原薬の供給が止まると、再び薬の安定供給に不安が生じる事態も想定され、対策を講じるべきだとの声が上がっている。
インドのハイテク中心地に
インド中南部にあるハイデラバードは、世界有数の巨大IT(情報技術)企業が進出し、インドの「ハイテク・シティ」として知られている。加藤厚労相は、21日にインド企業を視察し帰国する予定だ。
一方、G20保健相会合では、感染症危機に対応するワクチンや治療薬の供給策、デジタル化などについて意見交換が行われた。加藤厚労相は「日本もいろいろな取り組みをしているが、世界の潮流に負けないように頑張っていきたい」と述べた。
筆者:内藤泰朗(インド北西部・ガンディーナガル)