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新型コロナウイルス感染症の影響で、バナナや冷凍庫といった意外な品目の輸入額が令和2年は相次いで過去最高を更新する見通しとなったことが分かった。外出を楽しむのではなく、家の中でお金を使う「巣ごもり消費」の増大が背景にあり、消費活動の変容はコロナ禍収束が見えない今年も尾を引きそうだ。
財務省が発表した11月の貿易統計によると、バナナの令和2年1~11月の輸入金額は前年同期比約0・5%増の約976・9億円に上る。コロナ禍で全体の貿易規模が縮小する中、元年に続き2年連続で過去最高を更新する可能性が高い。
港別でバナナの輸入量、額ともにトップの東京港を管轄する東京税関は「健康意識の高まりに加え、休校や在宅勤務で家にいる時間が増え、手頃に小腹を満たせるバナナが人気になったのでは」と分析している。
輸入額が増えたのはバナナだけではない。ダンベルなどの「トレーニング用具」も11月までの累積で既に過去最高だった昨年を超えた。「外出自粛による運動不足解消のため」(名古屋税関)とみられる。三密を回避してレジャーを楽しむための「テント」も過去最高を更新しそうだ。大阪税関は「芸能人のキャンプ動画や、キャンプを題材とするドラマ、アニメの影響もある」と分析している。キャンプを楽しむ女子高生の日常を描いた人気アニメ「ゆるキャン△」では、コロナ下で密を避けて楽しめるレジャーとして話題となったソロキャンプ(1人で楽しむキャンプ)の楽しみ方なども描かれている。
このほか食事を家でとる機会が増えたことで家庭用中心の「直立型冷凍庫」の輸入も11月で既に過去最高だった元年分を超過。コロナワクチンや治療薬の開発・保存に必要な業務用の「横置き型冷凍庫」も今後、輸入量の増加が見込まれる。
第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは感染拡大で飲食や観光などのサービス消費が激減した分、財にお金が流れたと分析。いわゆる「モノ消費」から体験型の「コト消費」へと関心が移る最近の流れが「逆流した」と指摘し、感染拡大が収まるまでこの傾向が続くとみる。
特需が生まれるのは悪いことではないが、その裏表で国内のサービス消費が減退し、回復を見込む3年の景気がバナナの皮ならぬコロナ禍で滑らないように願いたい。
筆者:林修太郎(産経新聞経済本部)