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「徴用工」問題を巡り、韓国の最高裁でまた日本企業への賠償命令が確定した。不当な「強制動員」などと決めつけ、史実を無視して国家間の約束を反故(ほご)にすることこそ不当である。到底容認できるものではない。
今回の訴訟は、日本製鉄(旧新日鉄住金)で働いていた7人と、三菱重工業で元挺身(ていしん)隊員として働いた4人の韓国人と遺族らが2013~14年に提訴した2件だ。
最高裁は、「強制動員被害者」の慰謝料請求権を認めた原審判決に誤りはないなどとして日本企業の上告を棄却、計11億7千万ウォン(約1億3千万円)の賠償を命じた1、2審判決が確定した。同種の訴訟で最高裁が日本企業に賠償を命じた判決確定は18年以来だ。
林芳正官房長官は「日韓請求権協定に明らかに反しており、極めて遺憾だ。断じて受け入れられない」と述べ、韓国側に抗議したことを明らかにした。日本政府は、日本企業への賠償命令が国際法にも、史実にも反することをさらに明確に発信してもらいたい。
そもそも、日本側が賠償を支払う必要はない問題だ。日韓の賠償問題は国交正常化に伴う1965年の協定で「個人補償を含め完全かつ最終的に解決」している。協定に基づき日本は韓国に無償3億ドル、有償2億ドルを支払い、韓国は戦後の復興を果たした。この約束は両国関係の基盤である。
不当な強制労働などとするのもいいがかりだ。日本の朝鮮半島統治時代、昭和19年9月以降、「国民徴用令」に基づき、日本の工場などで働いていた朝鮮半島からの労働者はいるが、賃金支払いを伴う合法的な勤労動員である。
日韓関係を重視する尹錫悦政権は「徴用工」問題で、勝訴した原告に韓国政府傘下の財団が賠償金を支払う解決策を発表しているが、一部の原告は解決策の受け入れを拒否している。
原告側に不満が残るのは、歴代韓国政権が十分に説明せず、解決済みの問題を蒸し返してきたつけであろう。韓国側の責任で解決すべき「問題」であるのは明らかだ。
国家間の約束が守られないなら、韓国の国際的な信用は失墜する。韓国側は、日韓関係の基盤を崩し、関係悪化を喜ぶのは誰かも認識すべきだ。
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2023年12月22日付産経新聞【主張】を転載しています