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日教組の教研集会で、東京電力福島第1原発から放出される処理水を「汚染水」と記した教材を使い、政府批判を煽(あお)るような授業が報告された。
「汚染水」は実態を無視した誤った用語だ。中国などが日本を批判するためにも用いている。政治的主張を教室に持ち込み、子供たちにおかしなことを教えないでもらいたい。
教研集会は組合教員らの日ごろの授業などの取り組みを報告するもので、札幌市で26日から3日間の日程で開かれた。
神奈川県の中学教員が発表した社会科の実践報告によると、原発事故後の政府対応について「福島県漁連の反対する汚染水の放出を強行」などと批判したプリントを配布し、生徒に原発問題を考えさせていた。
また、処理水放出を巡り日本産水産物を輸入禁止とした中国への批判が生徒から上がると、教員は「放出に一番反対していたのは誰だったのだろう」と問い、「政府が福島県漁連との約束を破って放出を強行したことが(生徒に)理解できた」などとリポートに書いている。
これでは指導ではなく、誘導だ。教員は、さまざまな視点で原発問題を取り上げたとしているが、授業後に政府方針への賛否を生徒に問うと、反対が賛成より約3倍も多く、明らかに偏りがみられた。「首相退任してほしい。責任をとれ!」という過激な意見もあったという。
日教組の教員による偏向的な指導は過去にもしばしば問題になっている。昨年の教研集会でも、政府が世界文化遺産登録を目指す「佐渡島の金山」(新潟県)を巡り、朝鮮半島出身者を強制労働に従事させたとの認識を一面的に訴える指導の実践例が報告された。
歴史の授業などで日本をことさら悪く教える授業は、日教組の一部教員に限らない。政治的に偏った授業は、教員の信頼を失うものだ。
日教組の瀧本司委員長は教研集会初日の全体集会で、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの戦闘などに触れ、「日本でも憲法や教育の危機が増している」と述べた。
だが自虐的な戦後教育を引きずり、現実無視の偏向指導を続けることこそ危うくないか。その最大の被害者が子供であることを忘れてはならない。
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2024年1月29日付産経新聞【主張】を転載しています