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イランがイスラエルに対して大規模な直接攻撃を行った。
イスラエル領内に向けて、弾道ミサイルや巡航ミサイル、自爆型無人機(ドローン)を300発・機以上も放った。イスラエル軍や米軍などが迎撃し、ほとんどを撃墜した。
イランはイスラエルと長年の敵対関係にあるが、直接攻撃は初めてである。これまではイランの代理勢力がイスラエルを攻撃したり、双方が第三国などで互いの標的への攻撃を繰り返してきた。
イランは「在シリアのイラン大使館が4月1日に攻撃されたことへの報復だ」と主張し、これ以上の事態の激化を避けたいとの姿勢を示している。
だが、他国の領土へ向けた直接攻撃は一線を越えている。イランは強い非難を免れない。
先進7カ国(G7)首脳はオンラインの緊急会合を開き、イランによる攻撃を「最も強い言葉で非難」し、イランや代理勢力による攻撃の停止を要求する声明を出した。イスラエルへの「全面的な連帯と支援」も表明した。いずれも妥当だ。
イスラエルは反撃を検討している。イランやその代理勢力が攻撃を重ねるかもしれない。事態がエスカレートしてイスラエル・イラン間の「第5次中東戦争」へ発展することは何としても避けたい。
影響は地球規模である。米国が今以上に中東に関与すれば、インド太平洋地域などへの目配り、対応がおろそかになる。抑止力の低下で台湾有事への懸念は高まる。ウクライナ支援も滞りかねない。
世界のエネルギー安全保障にも悪影響がある。日本にとっても原油の9割超を依存する中東の安定は死活的に重要だ。
イスラエル、イラン両国と友好関係を持つ日本は、事態の沈静化に向け、外交努力を続ける必要がある。
同時に、政府や企業は最悪の事態に備え、関係地域の邦人の避難や保護に万全を期してもらいたい。自衛隊派遣の準備も急ぎ済ませておくべきだ。
イスラエルはアローミサイルで弾道ミサイルを迎撃した。巡航ミサイルやドローンには戦闘機に加え、アイアンドームという防空システムも活用したとされる。中国や北朝鮮などの脅威にさらされている日本にとって教訓となる備えである。
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2024年4月16日付産経新聞【主張】を転載しています