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ウクライナのゼレンスキー大統領が、国連の総会と安全保障理事会でのウクライナ情勢に関する首脳級会合でそれぞれ演説した。
ゼレンスキー氏は総会で、ウクライナ侵略を続けるロシアを非難し、「侵略者を倒すために団結しなければならない」と呼びかけた。ロシアについて、食料や占拠した原発を「武器化」して多くの国々を「脅している」と批判した。ロシアが世界の脅威になっている点を指摘したということだ。
岸田文雄首相やブリンケン米国務長官らも出席した安保理首脳級会合でゼレンスキー氏はロシアの「犯罪的な侵略」を非難し、露軍撤退を要求した。
ゼレンスキー氏の対露非難と国際社会への団結の呼びかけはもっともだ。国際法と人道に反するロシアの侵略は絶対に成功させてはならない。加盟国はゼレンスキー氏の叫びを真摯(しんし)に受け止め、効果的な支援を継続しなければならない。
ロシアのラブロフ外相は首脳級会合で「モスクワはキーウ政権の犯罪行為を阻止するためにウクライナに介入せざるを得なかった」などと侵略の正当化を図ったが、少しの説得力もなかった。
ロシア代表団はゼレンスキー氏が自国よりも先に発言することに不満を表明したが、安保理議長国のアルバニアのラマ首相は「ロシアが戦争をやめればゼレンスキー氏が発言することもない」と一蹴した。
侵略が始まってから1年半以上が経(た)ったが、ウクライナの抗戦と各国の制裁にもかかわらずロシアは撤退を拒んでいる。
どの国も侵略の余波を受けているが、もっとも苦しいのは命を賭して祖国を守っているウクライナの人々だ。国際社会は支援をためらってはならない。
ゼレンスキー氏の国連総会での演説では、昨年のオンライン演説時よりも空席が増えたのは否めない。それでも、加盟国の大半はロシアの侵略を難ずる立場を崩していない。ロシアとともに新興5カ国(BRICS)を形成するブラジルと南アフリカの大統領もウクライナの立場に理解を示す演説を行った。
岸田首相は首脳級会合で「日本はウクライナとともにある」と述べた。日本はウクライナ支援の中核となり、ロシアの横暴を許さない国際社会の団結を高める役割を果たすべきだ。
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2023年9月22日付産経新聞【主張】を転載しています