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日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国首脳が、覇権主義を追求する中国と隣り合う日本に集い、抑止に向けたメッセージを発した意義は大きい。
4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会合の冒頭、岸田文雄首相は、ロシアによるウクライナ侵略に言及し、「インド太平洋地域で同じようなことを起こしてはならない」と述べた。
妥当な問題提起である。東、南シナ海で国際ルールを無視した海洋進出を続け、台湾を併吞(へいどん)する機会をうかがう中国への異議の表明にほかならない。
4首脳は、いかなる地域でも力による現状変更を許してはならないことを確認し、緊張を高める威圧的、挑発的、一方的な行動への反対を共同声明に明記した。
注目すべきは、国名こそ避けたものの、係争地の軍事化や他国の資源開発の妨害など、中国のルール違反を声明に具体的に記したことだ。台湾海峡の問題まで踏み込めば、なおよかった。
豪州のアルバニージー新首相は、野党労働党党首として21日の総選挙に勝利すると、「豪州にとって最優先事項だ」として東京に駆け付けた。かつての労働党政権は親中路線だったが、はっきりとした転換の意思表示である。
中国は、ソロモン諸島と安全保障協定を結ぶなど太平洋の島嶼(とうしょ)国への浸透を強めており、豪州はその脅威を直接感じている。クアッドが打ち出した島嶼国の経済力向上や気候変動対策のための協力強化などは適切な対応である。
ロシアのウクライナ侵略をめぐっては、一方的な現状変更への反対といった原則論のほか、岸田首相が「4首脳が悲惨な紛争について懸念を表明した」と指摘するにとどまった。
中立の立場を取るインドへの配慮とみられるが、民主主義国家としてロシアに厳しい姿勢を取るよう、インドへの働きかけを続けるべきだ。
クアッドが、インド太平洋地域において5年間で500億ドル以上のインフラ支援、投資を目指すのは、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するためだろう。クアッドを「自由で開かれたインド太平洋」の推進役として定着させ機能させなければならない。中国抑止には地域の幅広い協力が不可欠だ。東南アジアや南アジア諸国などとも連帯する必要がある。
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2022年5月25日付産経新聞【主張】を転載しています