国際会合「クリミア・プラットフォーム」後に記者会見に臨む
ウクライナのゼレンスキー大統領=8月23日、キーウ(AP)
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日本外交はロシア(旧ソ連)による北方四島占領の不当性を世界に訴える格好の場を逸したといわねばならない。
猛省を促したい。
ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアのプーチン大統領によって2014年に一方的に併合された、南部クリミア半島の奪還を目指して23日開いた国際会合「クリミア・プラットフォーム」のことだ。
昨年に次ぐ2回目の会合には、独仏首脳や岸田文雄首相ら主要国を含めた約60カ国・機関の代表がオンラインで参加した。ウクライナが今月上旬以降、クリミアへの反転攻勢に出ている中での大がかりな国際会合の意義は重大だ。
冒頭、ゼレンスキー氏は「侵略はクリミア併合から始まった。世界の安全を保障するため、ロシアの侵略に勝利することが必要だ」などと訴え、各国代表も次々と「連帯」を表明した。
岸田首相は演説で「ウクライナ侵略は欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ」と述べたうえで、「日本は一方的な現状変更の試みには、断じて反対する」と強調した。
ところが、77年前の第二次大戦の終戦時、ソ連の独裁者スターリンが日ソ中立条約を一方的に破って日本に侵攻し、火事場泥棒的に四島を強奪した暴挙には一言も触れずじまいだった。プーチン氏の残忍なウクライナ侵略はスターリンの国際犯罪の再現でもある。
岸田首相がまさに領土奪還をテーマにした国際舞台でなぜ、「四島返還」の歴史的正当性を訴えないのか、全く理解に苦しむ。
プーチン政権は「領土抜きで平和条約を締結する」と日本を愚弄する立場を公言してきたが、ウクライナ侵攻後、一段と傲慢さを強めている。3月に交渉自体の一方的中断を通告した後、トルトネフ副首相は独自開発などで「四島をロシアのものにする」と暴言を吐いた。在日ロシア大使館は四島占領は「日本が行った侵略とナチス・ドイツとの同盟に対する処罰の一部だ」などと嘯(うそぶ)いている。
歴史の真実をねじ曲げ、宣伝戦を仕掛けているロシアに対しては領土問題の国際化が不可欠だ。
ソ連崩壊前後の1990年から3年続きでG7サミットが「領土問題解決」を支持する議長声明や政治宣言を採択したこともある。懸命の外交努力が主要各国を動かした教訓を生かすべきだ。
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2022年8月26日付産経新聞【主張】を転載しています