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新型コロナウイルスにかかる医療の公費支援が10月1日以降に見直される。これまでゼロだったコロナ専用治療薬の患者負担が新たに求められる。
これらの治療薬の自己負担は最大9千円となる。治療薬には高額なものが多く、1治療で約9万円の薬もある。その1割を目安に上限を設けた。来年3月まで継続する見込みだ。
通常の医療では3割となる現役世代などの自己負担を1割の9千円にとどめたのは激変を緩和するためだ。同様に2割負担者は最大6千円、1割負担者は最大3千円を負担する。
既に新型コロナは季節性インフルエンザと同様、感染症法上の5類となった。新型コロナの治療薬のみを全額公費とするわけにはいかず、一定の患者負担はやむを得ない。激変緩和による段階的な負担増も妥当だ。
折しも新型コロナの感染者数は高水準で推移している。平時に向けて過渡期を乗り切るためにも、政府は負担増に関する説明を尽くし、国民の理解を促してもらいたい。
10月以降は患者負担だけでなく、医療機関に対する公費支援も抑える。医療機関が病床を確保したときに支給される病床確保料は重症患者向けに絞る。国が感染状況に応じた病床数の目安を都道府県に示し、感染拡大時に支給する形に変更する。
病床確保料については、誤請求や過大支給があり、会計検査院から不適切な支出が指摘されていた。効率化を図るのは当然である。
もちろん、感染拡大期に必要な病床確保がこれによって滞ることは許されない。政府は、都道府県と医療機関の協力が円滑に進んでいるかどうかを十分に把握し、新たな枠組みが着実に機能するよう働きかけなくてはならない。病床不足を回避するのも国の責務である。
コロナ医療の公費支援を巡っては、令和6年度以降のワクチン接種の在り方も課題だ。先に始まった今年秋のワクチン接種を含めて、接種費用はこれまで全額を国費で賄ってきた。だが6年度からはインフルエンザワクチンなどと同様、市町村主体の実施に移行する方向だ。
そうなれば接種に自己負担が求められる可能性がある。これが適時適切な接種の支障とならないよう、政府は対応策を十分に検討しなくてはならない。
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2023年9月23日付産経新聞【主張】を転載しています