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政府の新型コロナウイルス感染症対策の全体像がまとまった。
新型コロナの感染力が今夏の倍になると想定して、医療体制の強化、ワクチン接種の促進、治療薬確保、日常生活の回復の4本柱を据えた。
治療薬は自宅で使える飲み薬計約160万人分を確保する。国産の飲み薬などの開発費用として1薬剤あたり最大で約20億円の支援なども盛り込んだ。
感染拡大の恐れがある冬場を前に、岸田文雄新政権がコロナ対策の全体像を示すのは当然だ。国民の7割以上が2度のワクチン接種を済ませているとはいえ、油断は禁物である。新たなコロナ対策を画餅にしないためにも、きめ細かく中身を詰め、対策の実効性を高めてもらいたい。
医療体制の強化では、全国集計で今夏より3割多い約3万7千人が入院できる体制を今月末までに構築する。
基礎疾患などがあり重症化リスクのある人や、入院調整中の人のためには臨時医療施設などを増やすほか、宿泊療養施設についても約1万4千室を増やす。感染者の重症化と病床逼迫(ひっぱく)の防止を重視したものだ。
だが、数値が示されただけでは安心できない。第5波では都道府県ごとに入院患者を受け入れる病床数が示されながら効率的に稼働しなかった。用意した病床と入院が必要な患者のミスマッチがあったり、予定よりも重度の人を受け入れて看護師が不足したりするケースがあったためだ。
欠けていたのは、機動的な医療人材の確保であり、都道府県と医療機関の密な意思疎通である。
その反省を生かし、今回は政府が広域で医療人材を確保する施策などが盛られた。公立・公的病院などからの派遣を想定しているが確実に機能するのか。事前に人数や候補者を把握するなどで実効性を高めなくてはならない。
解せないのは、コロナ対策の全体像と言いながら、水際対策や行動制限の緩和策などは含まれておらず、それらが五月雨式に発表されていることだ。例えば、外国人ビジネス関係者や留学生らの新規入国が条件付きで11月8日に緩和された一方、行動制限の緩和は来週以降の発表となる。こうした対応が第6波に備えた政府の方針をわかりにくくしていないか。効果的な発信を求めたい。
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2021年11月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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