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トヨタ自動車が令和6年3月期連結決算で空前の利益を上げた。本業のもうけを示す営業利益は5兆円を超えこれまで日本企業で最高だったトヨタの4年3月期の利益を2兆円以上も上回った。
多くの日本企業が世界市場で存在感を失う中で、トヨタの業績は際立っている。成長投資を継続し、稼ぐ力をさらに磨き日本経済を牽引(けんいん)してほしい。
大幅な最高益更新は、採算性の高いハイブリッド車(HV)の販売好調が大きい。HVを核に、レクサスブランドを含むトヨタ車の世界販売台数は初めて1千万台を超えた。
性能向上などに伴う値上げも奏功した。値上げしても販売が落ちなかったことは、消費者に商品力が評価されていることを示している。円安によって輸出採算が改善したことも利益の押し上げ要因になった。
7年3月期は一転して減益を見込む。電気自動車(EV)や人工知能(AI)、職場環境改善などへの投資に約2兆円を投じるためだという。
経営課題の解決のために、投資を拡大することは今後の成長に欠かせない。目先の利益よりも成長投資を優先した経営判断を評価したい。
中でもEV事業の強化は着実に進める必要がある。トヨタは世界のEV販売を8年までに150万台とする計画だが、現状では充電もできるプラグインハイブリッド車(PHV)を含めても約25万台だ。自動車の脱炭素技術は中長期的にEVが中核になるとの見方は変わっておらず、巻き返しを急ぎたい。
一方、3千億円を取引価格の引き上げなどで部材の仕入れ先や販売店に振り向ける。労務費などの上昇に充ててもらう考えという。裾野が広い自動車産業の成長は日本経済の発展に欠かせない。稼いだ利益を取引先に適正に還元し、サプライチェーン(供給網)を維持、強化しようとする姿勢は妥当だ。
好業績の陰で、グループではダイハツ工業をはじめ傘下企業で認証試験などの不正が相次いで明らかになっている。
世界中でトヨタ車が受け入れられているのは商品に対する信頼性である。今後も成長を続けるにはグループガバナンス(企業統治)の改革が急務だ。再発防止策を徹底し、グループの信頼回復に努めてほしい。
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2024年5月12日付産経新聞【主張】を転載しています