新型コロナウイルスの感染拡大により延期となった東京パラリンピックは、来年の8月24日に開幕する。
世界の感染状況が沈静化する兆しはまだ見えない。だが、われわれは東京五輪と同様に、大会開催への強い意志を持ち続けたい。
東京大会の開催決定を機に、街のバリアフリー化は進んだ。障害がある人々への公共サービスも、招致決定前より明らかに向上した。「多様性」や「共生」のキーワードが、国民の意識を大きく変えたからだろう。
日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長は「ハードではなく、ハートのレガシーを残そう」という。この流れを、次の世代へと確実に引き継いでいかなければならない。
開催に向けたハードルは高い。パラ選手には呼吸器系の基礎疾患を持つ人も多く、コロナ感染で重症化する危険性は小さくない。各国の選手たちが訪日に不安を募らせているのも事実である。
ワクチン開発に進展があったとしても、コロナへの懸念は消えない。世界の選手たちを「安心、安全」に迎え入れるためにも、大会組織委員会は感染防止策に万全を期してもらいたい。
パラ競技団体には延期に伴う財源の不安もある。予定していた大会が開催できず、スポンサー企業の協賛権利が履行できないケースは増えている。契約の継続や新規スポンサーの獲得が難しくなっており、競技団体の活動は先行きが見通しにくい。
国はパラスポーツ界の自助努力に委ねるだけでなく、支援の枠組みを検討してはどうか。社会を前向きに変える力は、五輪よりもパラの方が格段に大きいからだ。
現時点では、観客数の大幅な削減が避けられない。とはいえ、器具を使いこなして競技力に結び付けるパラ選手の技術、パラ競技の持つ迫力は、画面越しの観戦だけでは十分に伝わらない。
パラ競技の魅力を多くの人々に届けるためにも、組織委は観客数の確保に向けて可能なかぎり検討を重ねてもらいたい。
パラ選手たちは感染防止に神経をすり減らしながらも、日々の鍛錬に励んでいる。彼らの活躍はコロナ禍で疲弊した社会に、前に進む力を与えてくれるはずだ。われわれも強い期待感をもって、選手の背中を押し続けたい。
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2020年8月24日付産経新聞【主張】を転載しています