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アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の3日目に、地球温暖化防止へ原子力発電を活用する有志国宣言が公表された。
「2050年までに世界の原子力発電の設備容量を3倍に拡大する」ことを目指す内容だ。米国の発意による提案で、日本をはじめ、議長国のUAEや英仏加など22カ国が宣言文書に署名した。
温暖化防止の脱炭素とエネルギー安全保障の両立を可能にする現実的な取り組みとして、賛同の広がりを期待したい。
国連は20世紀後半の気温上昇を、火力発電や産業活動の拡大に伴う二酸化炭素などの温室効果ガスの排出増加によるものと断定している。
今COPでは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを30年までに3倍にする目標も日本を含む多数の国々の支持を得ているが、再エネには発電量が安定しないことや大面積を必要とする難がある。
それに比べ原子力発電は限られた敷地面積で大電力の安定供給が可能だ。難点は過酷事故が起きた場合の被害だが、福島事故を教訓に国内の原発の安全性は大幅に向上し、海外でも万一の炉心溶融事故に対応可能な原発の開発が進んでいる。
原発の有志国宣言は日本がリードする高温ガス炉にも触れている。発電しながら水素を製造できる新型原発だ。
宣言が目指す原発の発電力の3倍化は、各国一律ではなく世界全体での構想だ。日本が海外での原発立地へ積極進出する好機である。国内では新規原発の建設が10年以上、止まっている。高度な技術の維持と継承のためにも、海外での建設プロジェクトへの参入が急がれる。
国内の33基の原発中、運転中は12基に過ぎない。原発を脱炭素電源の主力に戻すには、原子力規制委員会の安全審査の効率化が欠かせない。
また約30年先を展望すれば原発の建て替えや増設が不可避だが、それには使用済み燃料の再処理工場の完成を急ぎ、核のごみの地下岩盤施設の立地にめどをつけなくてはならない。
いずれも国が前面に立つべき要件である。電力は国家の活力源だ。COP28での有志国宣言をバネに日本の原子力発電を回復軌道に乗せたい。
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2023年12月7日付産経新聞【主張】を転載しています