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皇室外交のもたらす大きな意義が窺える英国ご訪問だった。
天皇、皇后両陛下が8日間にわたる英国での日程を終え、6月29日に帰国された。
両陛下はチャールズ国王夫妻をはじめ英王室との交流を深められた。行く先々で英国民や在留邦人の歓迎を受け、友好親善の実を挙げられた。
心からの敬意と感謝を込めて、おかえりなさいと申し上げたい。両陛下を温かくもてなしてくれた国王夫妻や英政府、英国民に深く感謝したい。
国賓として招かれた両陛下は歓迎式典や馬車でのパレード、無名戦士の墓への供花などさまざまな行事に臨まれた。
特筆すべきは、バッキンガム宮殿で25日に行われた国王夫妻主催の公式晩餐(ばんさん)会だ。天皇陛下は、国王から贈られた英国最高位の「ガーター勲章」を着けて英語であいさつされた。
その中で陛下は、「日英両国には、友好関係が損なわれた悲しむべき時期がありました」と先の大戦に触れた上で、昭和天皇と上皇陛下が両国の親善と世界の平和を切に願われていたことを強調された。
そして現在、さまざまな分野で日英の連携・交流が加速しているとし、「(両国が)永続的な友好親善と協力関係を築いていくことを心から願っています」と述べられた。
そこには昭和天皇、上皇陛下と、それぞれの時代を生きた人々の思いを受け止め、令和の御代の国民と共に歩もうとされる力強いご意志が読みとれる。
チャールズ国王のスピーチも、両陛下や皇室、日本国民への愛情に満ちたものだった。
国王は、日英のパートナーシップの核心には「深い友情」があるとし、それは「歴史の教訓、とりわけ暗い時代の教訓から生まれた、国際ルールと制度の重要性に対する相互理解に基づくものです」と述べた。
両陛下は28日、それぞれ留学したオックスフォード大学にも足を運ばれた。その際にみせられた笑顔が、今回のご訪英の成果を物語っている。両国民の心を和ませ、絆をさらに強めたのは疑いない。
国際情勢が厳しさを増す中、日英両国が世界の平和に果たす役割は大きい。つつがなく終えられたご訪英を国民こぞって喜び、さらなる関係の深化につなげたい。
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2024年6月30日付産経新聞【主張】を転載しています