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中国の台湾への軍事的威嚇が激化している。10月1日以降、中国軍の戦闘機や爆撃機、早期警戒管制機など延べ150機が、台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した。
これほど多数の軍用機が台湾を威嚇、挑発するのは異常というほかない。台湾空軍の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対応している。
進入が始まった1日は中国の国慶節(建国記念日)だった。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は中国軍機の行動を「国慶節を祝う軍事パレード」とみなす評論を掲載した。子供じみた言動にはあきれてしまう。
偶発的な衝突のリスクも高まる。中国の習近平政権は危うい軍事的威嚇を二度と行ってはならない。地域の平和と安定を乱す振る舞いを控えるべきだ。
一連の進入について、日米英豪などの海上自衛隊・海軍が最近、沖縄南西海域で共同演習したことへの対抗措置との見方がある。だが、それで台湾を軍事的に威嚇することが許されるはずもない。
台湾の邱国正(きゅう・こくせい)・国防部長(国防相に相当)は、中台の軍事的緊張が過去40年余りで最も高まっていると危機感を表明した。中国軍の能力について「2025年にも本格的な(台湾への)侵攻が可能になる」と分析した。
中国軍機は戦闘機や爆撃機などが編隊を組み、台湾や、台湾が統治する東沙諸島、米海軍などの艦船を攻撃する能力を誇示した。昼間に加え、夜間も飛来した。
執拗(しつよう)な軍事的威嚇で台湾の人々を屈服させ、併吞したいのかもしれない。
だが、台湾は反発を強め、抑止力を向上させる構えだ。蘇貞昌行政院長(首相に相当)は「中国に武力行使させないよう団結し、防衛力を増強する必要がある」と語った。米国は協力する方針だ。
米国は台湾を擁護している。ブリンケン国務長官が、中国軍機の行動は「挑発的な行動で(地域を)不安定にする恐れがある」とし、威嚇の停止を求める考えを示したのは妥当である。
一方、松野博一官房長官が「動きの一つ一つへのコメントは差し控える」「台湾海峡の平和と安定が重要で、情勢を注視している」と述べるにとどまっているのは物足りない。岸田文雄首相には、中国の行動は許されないとはっきりクギを刺してもらいたい。
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2021年10月8日付産経新聞【主張】を転載しています