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中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。
中国の習近平政権が12月7日、ロックダウン(都市封鎖)と厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策から大幅な緩和に方針転換した後、感染者と死者が急増しているとみられる。
こうした事態に陥った中で、中国国家衛生健康委員会が25日、新型コロナの感染者数と死者数の公表を中止した。今後は下部組織の中国疾病予防コントロールセンターが「参考と研究のため」に情報提供するが、中国全土の24日の新規感染者数は2940人で死者はいなかったとした。
一方、中国・浙江省の省政府は、1日当たりの省内の新規感染者は100万人を突破し、近く迎えるピーク時には200万人に達するとの見通しを示した。これでは中国政府の発表を信じることはとてもできない。
感染症のパンデミック(世界的大流行)の際に重要なのは、感染者や死者の数を把握し、正直に公表することだ。それなしに、当該国も世界各国、国際機関も、各国民も適切な対応がとれない。
中国共産党政権の隠蔽(いんぺい)体質は今に始まったことではないが、習国家主席は正確なデータの把握と公表が為政者として最低限の義務である点を忘れてはならない。
3年前に中国・武漢市から新型コロナの感染が世界に広まった。その際も習政権は適切な情報公開を怠り、感染防止や水際対策などで中国および各国の初動の遅れ、混乱を招いた。中国は共産党体制の欠陥を再びさらけ出した。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が詳細な情報提供を中国に求めたのは当然だ。米国務省報道官は「ウイルスを野放しにすれば変異する恐れがあり、あらゆる人々の脅威となる可能性がある」と懸念を示した。
ゼロコロナ政策の撤廃は当然としても今回の感染急拡大は、習政権が政策転換に沿った適切な対応策を講じなかったために生じた。中国では高齢者のワクチン接種率が低く、国産ワクチン自体も欧米製より効果が不十分とされる。体制の優位性を示すために「ワクチン民族主義」をとったのであればあきれるほかない。
日本の水際対策はこのままでいいのか。岸田文雄首相は国民の不安を払拭するため、即座に動くべきである。
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2022年12月27日付産経新聞【主張】を転載しています