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離婚後の子供の養育について検討していた法制審議会の家族法制部会が、夫婦の合意を前提に、離婚時に双方が親権を持つ「共同親権」を原則とする要綱案をまとめた。
現在は、どちらか一方が親権を持つ「単独親権」のみだ。だが、夫婦が別れた後も、それぞれが子供にとって父親であり、母親である事実は変わらない。養育の責任と権利を父母の双方に認めることは妥当である。
政府は、法相への答申を経て通常国会に改正案を提出する。早期の成立をはかりたい。
最大の論点は共同親権を認めるかどうかだった。反対意見のなかには、共同親権を認めた場合、父母の意見の違いから子供の進路が決まらなかったり、家庭内暴力の被害者であった母子が危険にさらされたりするなどの懸念が寄せられた。
子供の健やかな成長を願っての制度変更が、子供のリスクになることは許されない。
父母が親権をめぐって合意できない場合には、家庭裁判所が審判を行う。暴力の有無や子供への悪影響などを考慮して単独親権とする。家裁は子供にとっての最善を的確に判断する必要がある。
養育費の取り決めにも踏み込む。離婚に際して養育費を決めている母子世帯は現状では半数に満たない。取り決めをした場合でも、継続的に受け取ることが難しい。
要綱案では、養育費に「先取特権」を設け、給与などの差し押さえなどにより、子供と同居する親が優先的に養育費を確保できるようにする。また、父母が養育費の取り決めなく離婚した場合でも、最低限支払うべき金額を「法定養育費」として設定する。
扶養の義務を父母の双方が負うのは、親権の有無にかかわらない。離婚が子供の貧困に直結せぬよう、養育費の確実な受け取りにつなげてほしい。
離婚後の面会交流も重要である。今は事前に取り決めのある世帯は3割程度にとどまる。
新たに、家裁の審判の過程で親子が試行的に面会交流をする制度を設ける。第三者を交えるなどで早期に機会を設けて、離婚後の円滑な交流につなげる狙いだ。子供が父親や母親の愛情を感じながらたくましく育っていけるよう、環境を整えるのは周囲の大人の責務である。
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2024年2月6日付産経新聞【主張】を転載しています