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政府のエネルギー関連の会議に提出された資料に、中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークの透かしが入っていたことが発覚した。
再生可能エネルギー導入に向けて規制見直しを目指す内閣府のタスクフォース(TF、特別作業班)に対し、委員を務めていた大林ミカ・自然エネルギー財団事業局長が提出した資料の件である。
大林氏が経済産業省や金融庁の有識者会議などのヒアリングに呼ばれた際や、国連、欧州連合(EU)の関連機関の会議への出席時に提出した資料にも同様のロゴがあった。
全省庁で実態を調べよ
中国は共産党支配の全体主義国家で、日本から尖閣諸島(沖縄県石垣市)を奪おうと狙っている。台湾問題では軍事力行使を辞さない姿勢を崩さず軍備を増強中で、日本にとって安全保障上の脅威だ。中国国営企業は共産党政権と一体である。
大林氏は「誤解を受け、不安にさせた」として委員を辞任した。財団主催の会合に中国国家電網公司が提出した資料を自身が改編した際にロゴが残ったと説明した。財団は「資料の内容は中国国家電網とは一切関係のないもの」と釈明した。
鵜吞(うの)みにはできず、辞任で幕引きにはできない。政策形成への中国の影響力工作はなかったのか。中国共産党政権の意向が浸透して日本の政策が歪(ゆが)むことは決してあってはならない。
調査すべきは再エネTFに限らない。岸田文雄政権はこれを機に、政策決定へ影響力工作が及んでいないか全省庁で点検に乗り出してもらいたい。
今回の問題で再エネTFは信頼できなくなった。解散または活動停止が必要で、従来の提言は棚上げしたらどうか。
所管閣僚である河野太郎規制改革担当相は問題が発覚した当初、X(旧ツイッター)に「チェック体制の不備でお騒がせしたことについて、今後は対策を強化し同じようなことが起きないよう徹底していきます」と投稿した。ロゴ入りの点だけを問題視していたのか。内閣府規制改革推進室の山田正人参事官も「事務ミスかもしれない」と述べていた。国政担当者として視野が狭すぎる。中国による影響力工作をなぜ一番に懸念しなかったのか。
高市早苗経済安全保障担当相は当初から「エネルギー安全保障は、国民の生活や経済活動にも大きな影響を及ぼす安全保障の中核的な課題の一つだ。他国から干渉されるようなことがあってはならない」と指摘していた。斎藤健経済産業相も「当該団体(同財団)が特定企業の強い影響を受けているとの懸念が払拭されるまで、ヒアリングを控える」と語った。
河野氏が会見で「自然エネルギー財団と中国の特定の企業の間にどんなつながりがあったのか調査を始めている。事実関係を調べた上で対処方針を決めたい」と表明したのは、問題への批判が高まってからだ。河野氏は閣僚として高市氏や斎藤氏を見習うべきである。
ASG構想ありえない
大林氏のTF委員起用について林芳正官房長官は「内閣府の事務方が提案した案を河野氏が了承した」と語った。人選に関わった河野氏と内閣府の責任は重い。河野氏が外相当時の「気候変動に関する有識者会合」では委員9人のうち3人が自然エネルギー財団のメンバーだった。河野氏は同財団との関係についても説明すべきだ。
同財団は太陽光、風力、水力などの自然エネルギー資源を相互に活用するため日本と中国、ロシア、インド、タイなどの送電網を連結するアジアスーパーグリッド(ASG)構想の実現を唱えている。中国国家電網公司の呼びかけで設立された国際的な送電網構築を目指す非営利団体にも参加していた。
ASG構想も国際的な送電網も専制国家の中露両国などに日本の電力供給を左右される余地を与えかねない。国家安全保障、エネルギー安保の両面から到底受け入れられない構想だ。日本国民の安全と国益を損なう構想を掲げるような財団のメンバーを政府の会議体の委員にすることは極めて危うい。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、政府の審議会などの委員選定にも、経済安保上の機密情報へのアクセスを官民の有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」が必要との見解を示した。その通りである。
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2024年4月1日付産経新聞【主張】を転載しています