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東京電力福島第1原発処理水の海洋放出が始まってから、中国人による反日活動が頻発している。
在中国の複数の日本人学校へ石や卵が投げ込まれた。福島県をはじめとする国内の飲食店、公的施設などへ中国発信の抗議や嫌がらせの電話が相次いだ。中国のSNSでは日本へ迷惑電話をかける動画や日本製品不買呼びかけの投稿が目立っている。
処理水は科学的根拠に基づき安全な方法で放出されている。抗議されるいわれは少しもない。中国発の卑劣な嫌がらせは直ちに中止されるべきだ。
外務省の岡野正敬事務次官は8月28日、中国の呉江浩駐日大使を呼び、抗議した。岸田文雄首相は同日、中国発の相次ぐ嫌がらせについて「遺憾なことであると言わざるを得ない」と述べた。日本の水産事業者への支援策を週内に公表すると明らかにした。首相は非科学的な中国政府などの振る舞いをもっと明確に批判すべきだ。禁輸への対抗措置の検討も必要である。
外務省は、中国へ渡航する邦人に注意を呼びかけている。
中国では平成24(2012)年、尖閣諸島(沖縄県)をめぐって反日活動が荒れ狂った。日系の工場が暴徒に放火され、日系スーパーは略奪された。日本大使館を囲んだ反日デモ隊は日の丸を燃やし、投石した。
今後、反日活動が激しさを増すことへの警戒が必要だ。在留邦人や旅行客は細心の注意をはらってほしい。渡航中止や帰国も選択肢ではないか。
今回の事態に最も責任を負うべきは、反省の色を見せない中国政府だ。科学を無視して処理水放出に反対する中国政府は処理水中のトリチウムに関する正確な情報が自国内で広がることを妨げ、不安を煽(あお)ってきた。
中国のSNSで中国の原発の方が福島第1よりもはるかに多くのトリチウムを放出しているとの正しい情報が投稿されても削除している。誤った情報しか自国民に与えず、SNS上の反日的投稿を放置している。中国政府は反日活動、反日感情を生んだ張本人も同然と言える。
中国経済の変調から生じた自国民の不満を日本に向けたり、歴史問題と同様の反日カードにしたい思惑が中国政府にはあるのだろう。だが、中国への共感は世界で広がっていないことを受け入れるべきである。
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2023年8月29日付産経新聞【主張】を転載しています