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北朝鮮が9月以降、多様な短距離ミサイルを相次いで発射している。
10月19日には、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射したと発表した。
日本を含む地域の平和と安全を脅かすもので到底受け入れられない。弾道技術を使ったミサイル発射は国連安全保障理事会の決議違反であり、即刻やめさせなければならない。
心もとないのは、その先頭に立つべき安保理が「平和の番人」として機能していないことだ。20日に緊急会合を開いたが、一致した声明を発表できなかった。
安保理は北朝鮮に核・弾道ミサイルの廃棄を求め、そのため、禁輸などの制裁を科している。それでも暴挙をやめないなら、さらなる措置を講じるべきだ。
それができなければ、北朝鮮に限らず、世界の平和と安全を脅かす国々が、安保理の言うことに耳を貸さなくなるだろう。
明らかな決議違反を前に会合を開き、報道声明もなしでは、意見の不一致を世界に示すようなものであり、大きな失態だ。
大統領暗殺後、治安が極度に悪化したハイチをはじめ、ミャンマーやアフガニスタンなど、安保理が重責を果たすべき問題は少なくない。メンバーの各国がそのことを自覚してもらいたい。
北朝鮮問題での安保理の無力は常任理事国の中国とロシアが、擁護しているのが要因だが、それは今に始まったことではない。
ただ、2016年以降、核・ミサイル関連のヒト・モノ・カネの制限から、外貨収入全般の締め上げへと制裁を強化した際には、交渉は難航し曲折はあったものの、中露もこれをのんだ。
その中露が、今回の北朝鮮問題で声明の発表にも応じないのは解せない。米中対立が激化する中、北朝鮮の軍事挑発が中国の手ごまになっているのだとすれば、これは大きな問題である。
そうした中で、バイデン米政権に米朝交渉に向けた目立った動きが見られないのは懸念材料だ。時間がたつほどに、北朝鮮は核戦力を増強させ、対米交渉で優位に立つ思惑もある。
これ以上、ミサイルによる挑発を許さないことが先決だ。北朝鮮から核を含む大量破壊兵器と弾道ミサイルをなくし、日本人拉致問題を解決するため、日本を含む各国が行動を起こすべきだ。
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2021年10月23日付産経新聞【主張】を転載しています