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またもや北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。
巡航ミサイルの発射を含め、今年に入って17回目である。しかも今回は判明しただけで6発を連射しており、異様というほかない。日本や世界の安全保障にとって極めて深刻な事態である。
岸信夫防衛相は北朝鮮が3カ所以上から少なくとも6発の弾道ミサイルを発射したと発表した。変則軌道ミサイルが含まれているという。
北朝鮮の西岸と東岸、内陸部からそれぞれ発射され、最高高度は約50~100キロ、飛行距離は約300~400キロだった。韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が首都平壌の順安付近など計4カ所から、日本海に向けて短距離弾道ミサイル8発を発射したとしている。
いずれも日本の排他的経済水域の外側に落下した。今のところ航空機や船舶への被害は確認されていないが、危険極まりない。日本への脅威は高まっている。国際社会は一致して、北朝鮮の暴挙をやめさせなければならない。
岸田文雄首相は「国際社会の平和と安定を脅かすもので断じて許すことはできない」と述べた。政府は北京の大使館ルートを通じて抗議した。日米韓3カ国の北朝鮮担当の高官は電話で協議し、「国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦」との認識で一致した。
北朝鮮が、かつてない頻度で新たな形の発射を繰り返しているのは、飽和攻撃や複数の地点から発射し、ほぼ同時に弾着させる能力向上を図る狙いがありそうだ。
2~4日には米韓両軍が沖縄南東沖の公海上で、米原子力空母ロナルド・レーガンが参加して合同軍事演習を実施しており、この動きに反発した可能性もある。コロナ禍にあっても、核やミサイル開発に影響はないと印象付けたいとの思惑もうかがえる。
歯がゆいのは、北朝鮮を甘やかす中露両国の動きだ。米国が5月に国連安保理に提出した北朝鮮制裁強化の決議案は、中露両国の拒否権行使で否決された。これでは北朝鮮がつけあがるばかりだ。中露に常任理事国の座を占める資格がないことは明らかだ。
北朝鮮は5月末、世界の核軍縮などを話し合う国連軍縮会議の議長となり、総会も開かれた。その直後の暴挙である。日本は米韓両国のほか、国際社会とも連携を強化し、経済と軍事の両面で圧力を強めていかねばならない。
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2022年6月6日付産経新聞【主張】を転載しています