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北朝鮮が11月21日夜、今年3度目となる「軍事偵察衛星」打ち上げを試みた。
朝鮮中央通信は新型ロケットを成功裏に発射し、搭載した偵察衛星を地球周回軌道に正確に進入させたと報じた。この偵察衛星が米領グアムの空軍基地などを撮影したとも主張した。
一方、防衛省は「現時点で地球周回軌道への衛星の投入は確認されていない」としている。日米韓3カ国が分析中だ。
落下物による直接の被害はなく、自衛隊は撃墜措置を講じなかった。発射は、北朝鮮が通報してきた22日から12月1日よりも早かった。少しも信用できない国だと改めて分かった。
地球周回軌道への衛星投入には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)以上の速度が欠かせない。衛星運搬ロケットは、国連安全保障理事会決議が北朝鮮に禁じた弾道ミサイルそのものである。打ち上げは到底容認できない。北朝鮮は核・ミサイル戦力を直ちに放棄すべきだ。
北朝鮮が偵察衛星にこだわるのは米軍や自衛隊、韓国軍の動向を監視し核、非核双方のミサイル攻撃に利用するためだ。
岸田文雄首相が「国民の安全にかかわる重大な事態だ」と述べ、発射を非難したのは当然だが、北朝鮮の独裁者は痛痒(つうよう)を感じまい。日本や各国はさらなるペナルティーを科すべきだ。
政府は官房長官声明で反撃能力を含む防衛力の抜本的強化の施策に着実に取り組むと表明した。自衛隊への長射程ミサイル配備を急ぐことが必要だ。
今回、全国瞬時警報システム(Jアラート)は機能したが肝心の地下シェルターが日本にほとんどないことに暗然とする。なぜ建設を急がないのか。
北朝鮮は偵察衛星の運用成功まであきらめないだろう。朝鮮中央通信は、早い期間内に数個の偵察衛星を打ち上げる計画に言及した。
5月と8月の発射失敗を受け北朝鮮はロシアの技術協力を期待している。ロシアは自国が賛成した安保理決議に反する行動をとるべきではない。中国も北朝鮮を擁護する姿勢を改めなくてはならない。
北朝鮮や中露という専制国家が平和を乱している。日米韓の連携は重要で、外交上の協力に加え、北朝鮮ミサイルの探知情報の即時共有や3カ国の共同演習を進めたい。
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2023年11月23日付産経新聞【主張】を転載しています