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北朝鮮が8月24日未明、「軍事偵察衛星」の打ち上げを試みたが、地球周回軌道投入に至らなかった。
5月末に続く失敗である。北朝鮮は衛星を運搬する「ロケット」の3段目に異常が生じたためとし、対策を講じて10月に3回目の打ち上げを行うと表明した。
「ロケット」発射は、国連安全保障理事会決議が北朝鮮に禁じた弾道ミサイル技術の利用である。到底容認できない。北朝鮮は直ちに核・ミサイル戦力を放棄し、偵察衛星保有も断念すべきである。
今回の「ロケット」は複数に分離し、朝鮮半島西の黄海、同南西の東シナ海、フィリピンの東の太平洋に落下した。いずれも北朝鮮が予告していた落下区域の外だった。フィリピン東方に落下した部分は沖縄本島と宮古島の間の上空を通過した。
船舶や航空機への被害はなかったが、危険な挑発行為といえる。岸田文雄首相が「安保理決議に違反し国民の安全にかかわる重大問題だ」ととらえ、北朝鮮を非難したのは当然だ。
日米韓は先の3カ国首脳会談を踏まえ、抑止力強化などで緊密に連携してもらいたい。
ミサイル発射時の情報共有や国連安保理での協力、自衛隊と米韓両軍による共同演習などが求められる。
日本が反撃能力の保有や地下シェルターの整備を急ぐことも重要だ。
韓国軍は、5月末の打ち上げ失敗で海没した残骸を引き揚げた。米韓両国の専門家の分析によれば、この時の「偵察衛星」は軍事利用できる性能が「全くない」代物だったという。
だが、北朝鮮は執念深い。いずれは衛星の機能を向上させ、地球周回軌道に投入して日本などを監視し、攻撃目標の選定に利用しかねない。
平和を乱す行為を続ける北朝鮮を押しとどめるには、衛星やミサイル、ロケットを開発したり、立て続けに発射したりするための資金の獲得をできるだけ抑えなければならない。
日米韓は国際社会に呼びかけて対北制裁強化を図るべきだ。制裁破りとなる対北交易に従事する中露の企業などにはペナルティーを科したらどうか。北朝鮮がサイバー攻撃で暗号資産などを窃取することも許してはいけない。蛇口を閉めるため手立てを尽くす必要がある。
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2023年8月25日付産経新聞【主張】を転載しています