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国際社会の関心がロシアによるウクライナ侵略に集まっている最中に北朝鮮が暴挙を働いた。
北朝鮮は3月24日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、北海道渡島半島の西方150キロの日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾した。
これまでで最も日本列島の近くに落ちた可能性がある。国連安全保障理事会決議違反で、日本の海に対するミサイル発射は認められない。
岸田文雄首相は訪問先のベルギーで「許されない暴挙で、断固として非難する」と語った。政府は北朝鮮に抗議した。
発射されたのは新型ICBMで、通常より高い角度の「ロフテッド軌道」をとった。
2017年11月のICBM「火星15」は53分間飛び、最高高度4000キロだった。今回の新型の飛翔(ひしょう)時間は71分間で今までで最も長く、最高高度6000キロ超も過去最高だった。通常の発射であれば、米東海岸も射程に収める。
岸田首相は「(北朝鮮の)ミサイル技術の進歩を感じる。国民の命を守るためにどうあるべきか、真剣に考え続けなければならない」と語った。
考え続けるだけでは十分ではない。日本のEEZ内にミサイルを撃ち込んできたのは、日本を侮った挑発である。岸田首相には、国民を守るための決断と行動こそが求められる。
北朝鮮の対日攻撃や挑発を抑止する十分な手立てを講じるべきだ。敵基地攻撃能力導入を政治決断し、自衛隊の装備、訓練、運用計画を整えてもらいたい。慎重姿勢を崩さない与党公明党を、岸田首相自ら説得すべきである。
鬼木誠防衛副大臣は「わが国にとって深刻な脅威だ」と危機感を表明した。
北朝鮮がICBMを実戦配備し、大気圏再突入時の高温から核弾頭を保護し、米本土の目標へ誘導する能力を持てば、米国に対して「最低限核抑止力」を持つことになる。
米本土の大都市などを「人質」にとることで、米軍から簡単に攻撃されなくなったと北朝鮮が高を括(くく)ればどうなるか。米国の核の傘に依存する日本は、北朝鮮の核をはじめとする軍事力の脅威に一層さらされる。
北朝鮮に核・ミサイル戦力の放棄を迫るとともに、日本を守る態勢を強化するときだ。
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2022年3月25日付産経新聞【主張】を転載しています