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ロシアの副首相2人が10月15~17日に択捉島と色丹島に入った。北方領土への経済特区導入に向けた視察が目的である。
北方四島は日本固有の領土であり、露高官の立ち入りも、一方的な特区創設も断じて容認できない。日本政府は関係者への査証(ビザ)発給を停止する制裁など、厳しい措置を速やかに講じるべきだ。
ミシュスチン首相が7月末に択捉島を訪れ、日本の抗議を受けたばかりである。それにもかかわらず、グリゴレンコ副首相兼官房長官とフスヌリン副首相が、日本政府の中止要請を無視して北方領土入りを敢行した。
日本政府は「北方領土に関する日本の一貫した立場と相いれず受け入れられない」と抗議したが、また歯牙にもかけまい。
日本はロシアによる2014年のクリミア併合を受け、関係した個人に対するビザの発給停止のほか、個人・団体の資産凍結といった制裁も発動した。北方領土問題についても、まずは同様の措置が取れるかを検討すべきである。
プーチン政権が導入を意図している特区とは、北方領土に進出する国内外の企業に対し、法人税や固定資産税などを10年間免除するものである。北方四島に露企業や外国企業の誘致を図るのが狙いであり、この計画が実効性をもたないよう手を打つ必要がある。
たとえば北方領土に資本を投下するロシアや第三国の企業について、日本企業との取引ができなくなるようにすることだ。必要な法整備を国会で議論してほしい。
日露は16年末の合意に基づき、北方四島での共同経済活動に関する協議を行ってきた。しかし、この協議には何ら実質的な進展がなかった上、ロシアは特区計画という身勝手な挙に出た。共同経済活動の議論はこちらから打ち切りにすべきである。
最近のロシアは北方領土や日本の排他的経済水域(EEZ)内での軍事演習を頻繁に行っている。プーチン政権は中国との軍事的連携を急速に深めつつ、日本を米国の同盟国として敵視する傾向を強めている。こうした状況でプーチン政権におもねるような対露外交が有害無益なのは自明だ。
今必要なのは、先進7カ国(G7)や日米豪印の枠組み「クアッド」など民主主義陣営で北方領土問題を共有し、国際的な対露圧力を加えることである。
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2021年10月21日付産経新聞【主張】を転載しています