20220806 Hiroshima Atomic Bomb Day 003

Hiroshima Atomic Bomb Memorial Lantern Floating on the Motoyasu River, on the afternoon of August 6, 2022, in Hiroshima's Naka Ward. (photo by Yuta Yasumoto)

広島原爆忌 元安川で行われたとうろう流し
=8月6日午後、広島市中区(安元雄太撮影)

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広島は77回目の「原爆の日」を迎えた。

 

多くの命が一瞬で、無差別に奪われた。犠牲者を悼み、平和への思いを新たにしたい。

 

ロシアのウクライナ侵略が続く今、世界は核戦争の危機に直面し、すべての国の安全保障が揺さぶられている。

 

日本は唯一の被爆国であり、この悲劇を最初で最後にするためにも、広島と長崎の経験を世界に伝え続ける責務がある。そのためには、あらゆる手立てを尽くすべきである。

 

核兵器廃絶は誰もが願うことだが、残念ながら理想と現実には大きな隔たりがある。

 

国連のグテレス事務総長(手前右から2人目)と原爆資料館を訪れた岸田文雄首相(同左端)=8月6日午前、広島市中区(代表撮影)

 

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の推計によると、今年1月時点での世界の保有核弾頭数は1万2705発だ。

 

ウクライナ侵略を続けるロシアは、対露制裁を強める米欧諸国を核兵器で恫喝し、北朝鮮はミサイル発射や核実験を繰り返している。米国防総省の報告書によると、中国は2030年までに少なくとも1千発の核弾頭保有を目指す意向があるという。

 

広島市の松井一実市長は平和宣言で、ウクライナ危機により、世界には核抑止力の拡大に理解を示す傾向があるとし、この流れを変えるためにも「核なき世界」実現を訴えるという。だが、現実に核兵器の使用を踏みとどまらせているのは、核抑止力である。

 

岸田文雄首相は米ニューヨークで開催の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説し、「核なき世界」という「理想」と、厳しい安全保障環境の現実を結びつけると強調した。だが、示した行動計画は具体性に乏しい。

 

ウクライナ危機で明確になったのは、核戦争のリスクが現実の脅威となり、抑止に向けた現実的な議論を進めるべき状況にある、ということだ。「核なき世界」の理想は尊いが、それを唱えるだけでは平和は守れない。

 

被爆者健康手帳を持つ被爆者は今年3月末時点で初めて12万人を下回り、平均年齢は84・53歳と高齢化が進んでいる。惨禍をいかに次世代につなぐのか。原爆の悲惨さや核抑止の重要性を発信する意味は今、重みを増している。

 

8月6日は原爆の悲惨さを訴え、犠牲者を悼む日である。そして同じ惨禍を繰り返さないために、現実的に平和を守ることを誓う日でもある。

 

 

2022年8月6日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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