Ayaka Furue

Ayaka Furue clinches her first major by sinking a winning putt for an eagle on the 18th hole in the final round of the 2024 Amundi Evian Championship on July 14. She finished with a total of 19-under par at the event held at the Evian Resort Golf Club in Evian-les-Bains, eastern France. (©Kyodo)

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パラシュートで降下する女性が持つ「日の丸」がフランスの空に舞い、これを見上げる古江彩佳の目には涙があった。

 

手渡されたその国旗を身にまとって「君が代」の演奏を聴き、勝利者インタビューを受けてトロフィーに口づけした。自身の海外メジャー初制覇を、なによりも実感できた瞬間だったろう。

 

仏エビアンリゾートGCで開催された女子ゴルフのメジャー大会「エビアン選手権」で古江が見事な逆転優勝を飾った。

 

女子ゴルフ・エビアン選手権でプレーする古江彩佳=7月14日(AP)

 

奇跡ともいえる連続のロングパットを沈めて首位をとらえ、最終18番のイーグルで勝利を決めた。試合展開も優勝セレモニーも美しく、感動的だった。

 

海外の報道は153センチの古江の身長に焦点をあてた。「こんなに小さな女子選手が…」と。ただし米ツアーに参戦中の古江は今季、バーディー数や平均スコアなどで1位にランクされていた。飛距離では及ばなくても正確な技術や勝負強さで上位入賞を重ねていた。メジャー制覇も決してまぐれではない。

 

193センチの大谷翔平や203センチの八村塁が本場でも見劣りしない体格で大リーグや米プロバスケットボール(NBA)で活躍するのとは、また一味違う趣がある。来季は172センチの河村勇輝もNBAに挑戦する。小さくてもできる。古江の快挙はそんな勇気も与えてくれる。

 

日本女子の海外メジャー優勝は、1977年全米女子プロの樋口久子以降はなかなか届かなかった。2019年に渋野日向子が全英女子オープンを制すると、今季は全米女子オープンの笹生優花に続いて2人目の制覇だ。誰かが扉を開ければ、必ず続く者が出てくる。

 

Ayaka Furue
メジャー初制覇を果たし、大会ボランティアと記念写真に納まる古江彩佳(中央)=7月14日、フランス南東部エビアンのエビアン・リゾートGC(共同)

 

古江は3年前の東京五輪では次点の3位で代表の座を逃し、パリ五輪代表を目指したがまたも次点に泣いた。五輪と同じ仏でのメジャー大会優勝に、古江の意地をみる思いだ。

 

今年の全米女子プロで2位に入り、古江を逆転してパリ五輪代表の座を射止めた山下美夢有はこの日、最終18番グリーンで古江を抱擁し、祝福した。山下は、古江より小さい150センチだ。ここにも世界に誇れる、小さな巨人がいる。

 

オリンピックは7月26日にパリで開幕する。一足早く仏の空に舞った「日の丸」を、大会の吉兆と受け止めたい。

 

 

2024年7月18日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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