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4月3日朝(日本時間午前9時前)、台湾東部の海域を震源とする強い地震が発生した。
震源に近い花蓮県などではビルの倒壊や土砂崩れにより大きな被害が出ている。
この地震で気象庁は沖縄本島地方と宮古島・八重山地方に津波警報を出した。午前10時40分には津波注意報に切り替え、正午に解除した。
現地では断続的に余震が発生し、被災者は不安を募らせている。岸田文雄首相は「必要な対応に万全を期し、早急に支援を行っていく」と述べた。
台湾加油(がんばれ)。被災状況の把握に努め、人命救助や医療、生活支援など現地のニーズに沿った効果的な支援で台湾の人たちの力になりたい。
気象庁によると、地震の規模はマグニチュード(M)7・7と推定され、最大震度6強だった。元日の能登半島地震(M7・6)や2413人の死者を出した台湾の集集地震(1999年、M7・7)とほぼ同規模だ。宮古島や与那国島では30センチの津波が観測された。
台湾と日本列島は、フィリピン海プレートと大陸側のプレートの境界に沿った一連の地震多発帯に位置する。東日本大震災では台湾からの支援が被災者の支えとなった。2018年の台湾東部地震(花蓮地震)で、台湾が海外からの支援を受け入れたのは日本だけだった。災害時に限らず、支え合い高め合う信頼関係を大切にしたい。
今回の地震では陸域に被害が及ぶほどの津波は発生しなかった。沖縄本島や宮古島、八重山諸島では島民、観光客らが避難所などに身を寄せた。津波防災の意識を再確認し、共有する契機としたい。
1771年に起きた八重山地震はM7・4と地震の規模は3日朝の台湾東部地震より小さいが、最大波高数十メートルの巨大津波が八重山地方の島々を襲い、石垣島では住民のほぼ半数が死亡した。沖縄県民だけではなく観光客も、この津波のことは知っておくべきだ。
津波の発生メカニズムは十分に解明されておらず、予測の精度には限界がある。実際の津波が予測より小規模にとどまるとはかぎらない。東日本大震災や八重山地震のような巨大津波から命を守り抜くには、予想波高や到達時間にとらわれずに避難に徹するしかない。
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2024年4月4日付産経新聞【主張】を転載しています