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Protesters against the new national security law in Hong Kong (AP Photo/Vincent Yu)

 

中国の全国人民代表大会常務委員会が6月30日、香港における民主化運動などを反政府活動とみなして取り締まる「香港国家安全維持法案」を全会一致で可決した。同法は即日施行された。

 

香港に保障されたはずの「一国二制度」を形骸化させ、香港の人々から言論や集会、報道の自由を奪うものであり、到底容認できない。中国の習近平政権は最大限の非難に値する。

 

これに先立ち、6月20日には、中央軍事委員会傘下の中国本土の治安部隊である武装警察部隊(武警)の香港派遣を容易にする法改正も行われた。

 

自由と民主を知っている香港市民は、共産党独裁政権が支配する本土と同様の治安立法に脅(おび)えて暮らすことになる。場合によっては、流血の弾圧となった1989年の天安門事件が再現され得る、という点も極めて深刻だ。

 

「国家安全維持公署」という中国治安当局の出先機関が置かれる。国家安全法違反容疑で民主活動家は拘束され、人権状況が劣悪な本土へ連れ去られかねない。

 

香港市民だけの問題ではない。香港にいる外国人にもこの抑圧法の網がかかってくる点を忘れてはならない。

 

香港は97年7月1日に英国から中国へ返還された。中国は84年に英国と結んだ国際条約である中英共同宣言で、返還から50年間は香港の高度な自治、すなわち一国二制度を変えないと約束した。

 

返還23年にして条約を破り、国際約束を反故(ほご)にすることは許されない。中国は国際社会の声に耳を傾けず、内政問題だと言い張るが説得力は全くない。

 

中国政府の強い影響下にある香港政府は、民主派団体が返還記念日の1日に計画していたデモの開催を禁止した。

 

国際社会は、国家安全法に抗議の声をあげてきた香港市民と連帯しなければならない。国家安全法撤回を迫る必要がある。少なくともその運用を凍結させたい。

 

菅義偉官房長官は会見で「国際社会の一国二制度の原則に対する信頼を損ねるものだ」と国家安全法制定を批判した。河野太郎防衛相は「習国家主席の国賓来日に重大な影響を及ぼす」と語った。

 

批判は当然としても、それだけでは中国政府の翻意は期待できない。日本は米英両国などと協力して対中制裁に踏み切るべきだ。

 

 

2020年7月1日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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