創設75年を迎える節目の国連総会が始まった。第二次世界大戦終結直後の1945年10月24日に生まれた国連は「国際の平和と安全の維持」が第一の目的であり、その責務を担う最重要機関が安全保障理事会である。
東西冷戦はもとより、その後の地域や民族、宗教をめぐる紛争、大量破壊兵器の拡散、国際テロリズムなどの脅威を前に安保理がその役割を果たしてきたとはいい難い。
その「機能不全」が指摘されながら、抜本改革が手つかずなのは極めて遺憾である。
茂木敏充外相は75周年記念の高官級会合にビデオメッセージを送り、安保理改革と日本の常任理事国入りに意欲を表明した。挫折を繰り返してきた課題だが、あきらめてはならない。
安保理が抱える最大の問題点は、大戦の戦勝国で核保有国でもある米英仏中露の5大国が常任理事国を占め、拒否権を独占してきたことだ。
国連憲章には、加盟国が日本やドイツなど敗戦国に対して、安保理の許可なく武力行使を可能とした旧敵国条項も残っている。95年の総会決議により空文化したとの指摘もあるが、納得できない。戦勝国の発想が固定化したこの条項が、日本を侵略しようとする国に悪用される恐れはないのか。
今日、ロシアはクリミアを併合し、中国は南シナ海の軍事拠点化を進めている。中露両国は、核・ミサイル問題では北朝鮮の肩を持つ言動を繰り返し、シリア内戦をめぐってもアサド政権を擁護して問題解決を妨げている。
国際法を踏みにじり、「力による現状変更」を目指す中露両国が常任理事国であるがゆえに、安保理は世界の平和を乱す両国の振る舞いに対して無力である。
常任理事国がこのありさまでは、他の加盟国が問題行動をとった際に、安保理が説得力をもって強制力を行使できるのか、という疑問もある。
節目の国連総会は、安保理改革の機運を盛り上げる機会となるべきだが、コロナ禍で冒頭からビデオ中心になったのは残念だ。
当初の51カ国から加盟国が193カ国に増えた国連は、戦勝国の発想から決別すべきときを迎えている。日本が国際秩序を守る範を示し、平和を維持する重責を担っていくなら、そのこと自体が国連改革を促すことになる。
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2020年9月26日付産経新聞【主張】を転載しています